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にがてな人



「この間『ボーダーってみんな仲良さそうだよね。苦手な人とかいないの?』って聞かれたんだけど、おまえらいるか?」


出水と米屋のダブル馬鹿と駄弁っていたとき、不意に出水がそんな話を切り出した。


「いねぇな」
「俺も特にいねぇんだよな。というか、ボーダーって派党はあっても別に個人で…ってあんまりいねーよな。」
「秀次は迅さんのこと敵視してるけど」
「あと犬飼さんとカゲさん」
「それ言ったら当真さんと奈良坂もじゃね?」
「きりねぇー」
「でも、有名どころはそれくらいじゃない? こんだけ人がいて戦う組織なのに……たぶん仲良い方だよ」
「むしろランク戦とかで堂々と戦えるから、いざこざがないんじゃねーの?」
「あ、そうかもしれない! 米屋珍しく天才!」


珍しくは余計だわ!と反論する米屋を出水と2人でスルーする。間違ったことは言ってない。


「でも私はいるよ、苦手な人」
「へー、イメージねぇな」
「そう?」
「そうだな。誰とでも喋ってるイメージあるぜ」
「そっかー」
「……いやいや『そっかー』じゃなくて。誰だよ、苦手なヤツ」
「えー、『そっかー』って私の真似? 似てないしキモい!」
「は!? キモいはないだろ!」
「確かに今のはキモかった…」
「おい、米屋!」


あはは、と笑い始める米屋につられて私も出水も笑ってしまう。ひとしきり3人で笑ったあと、話題は逸れるかと思いきや「で、どうなんだ?」とばかりに2人にじーっと見つめられ、その目線に耐えられなくなり小さく息を吐いたあと話し始めた。


「まず城戸さん」
「「まず」」
「次に三輪くん」
「あー…」
「そういう感じか」
「最後に二宮さん」
「なるほど。そういう系統が苦手なのか」


なんとなく誤解された気がする。そういう系統が苦手って別にそういうわけじゃないんだけど…


「系統っていうか、城戸さんと三輪くんは近界民絶対殺すマンじゃない? ちょっと私にはそれが受け入れられないから…」
「あ、無表情だからじゃなくて?」
「え、城戸さんはともかく三輪くんは無表情じゃなくない? それに無表情だとしても他に無表情いるし」
「まあ、そうだな。秀次は喜怒哀楽の『怒』が強いから無表情ではない…?」
「無表情って言えば、風間さんとか奈良坂ってイメージだわ」
「レイジさんとかとりまるもだね」


無表情についての話に脱線してしまったが、二宮さんはなんでなんだよ、と2人して黙って見つめてくるので、ずっと考えていたことを漏らす。


「二宮さんはちょっと分からなくて。シリアスキャラだと思ったら天然だし、でもそれを突っ込める感じじゃないし…そもそも今さらなんて声かけていいのか分からないし……どう接したらいいのか分からなくて苦手です、」
「仲良くなるタイミングを逃したっつーやつか」
「そう、それ。もう3年くらい一緒にボーダーやってるんだけどね〜」
「いい人だけどな。確かにキッカケないと喋らないか」
「喋りかけづらい雰囲気ない…?」
「ある」
「慣れたからそんなことねーけど、初めはあった。でもそういうことなら…」


結局、ランク戦をいつも二宮さんと一緒に観戦しているという出水が次の機会に誘ってくれることになった。有難い。これを機に仲良くなれるといいな。

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