◎にねんせい ◎
朝起きたら、ハリーがいた。
予感はしてた。ハリーが閉じ込められてるとかなんとか話しているのを聞いたときから、何かするだろうとは思っていた。だけどまさかマグルの住宅地のど真ん中で空飛ぶ車を使うなんて。しかもあれは魔法界でも違法である。お父さんがクビになったらどうするの。よく考えてよ。
なんて、朝はいつも低血圧で機嫌が良くない私は心の中でブツブツ呟いていた。口には出さない。出した瞬間、もっとめんどくさくなることが目に見えているからだ。きっとロンが騒ぎ出す。あのままハリーを閉じ込めておけば良かったって言うのか、とか言いそう。そんなことは言っていない。ただ良い方法と言えないから頭を使えっていうだけなのに。
それから、ジニーはハリーのことを気にして普段より大人しくて、いろいろ学校のことを聞きたがっていたのにそれもどうでもよくなってしまったようだった。ハリーはあまり良くない家庭環境から解放されたからなのか、生き生きしている。ロンは遊び相手が出来てそれはもう楽しそうだ。双子は相変わらずイタズラに精を出して、パーシーは机に向かって動かない。課題も終わってしまった私は遊び相手もおらず、すごく暇だった。
一度ダイアゴン横丁に買い物に行ったけどハリーは行方不明になるし、ロックハートとかいう顔だけの男の胡散臭いイベントに巻き込まれ、お父さんとドラコのお父さんが大人げなく喧嘩するし、散々であった。帰り際にルシウス氏に睨まれたのはきっと『ウィーズリーのくせに私の息子に関わるんじゃない』ってことなんだろうな。すごい息子思いのお父さんですねーはいはい、って感じ。と全く気にしていないルイであった。
そうして夏休みが終わった。だからやっと学校が始まるとうきうきしてたのに、駅に到着したのは汽車が出発する時間ギリギリ。かろじて乗り込めたけど、もちろん空いてるコンパートメントはない。誰かお邪魔させてくれるところはないか、と探していたらちょうど一人で独占しているコンパートメントを見つけた。
「お久しぶりね、セオドール」
「なんだルイか。いきなり開けるなよ」
「あら、人聞きの悪い。ちゃんとノックしたじゃない」
「返事してないうちに開けるのはしていないのと同じだろ」
どうやらノックしてすぐにドアを開けてしまったのがお気に召さなかったらしい。不満げな顔を向けてきた。仕方ないじゃない、早く貴方に会いたかったのよ。そう言えばセオドールの顔が少し赤く染まった。見た目も醸し出すオーラも大人っぽいけど、こういうことはウブなのね。揶揄いたくなっちゃう。
「これで照れちゃうなんてセオドールって可愛いのね」
「男に可愛いなんていうな」
「その顔で言われても、ねぇ。っふふ」
「……笑うなよ」
その後はセオドールをからかったり、夏休みの話をしたり、たくさん話をした。寮が違うとあまり会う機会がないし、そもそもスリザリンとグリフィンドールだから気軽に話せないのよね。途中、窓の外に車が空を飛んでいるように見えたけど、気のせいよ。私知らない。
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