ネックレスを貰ってご機嫌なルイは1人きりのコンパートメントで鼻歌を歌っていた。
ドラコはルイにネックレスを渡したあと、しばらくボーっと外を眺め、ハッと気がついたように慌ててクラッブとゴイルを探しに行ってくると席を立った。おそらくそのまま3人でハリーをからかいに行くのだろう。ルイにはハリーをからかう趣味はないのでいってらっしゃいとドラコを送り出した。


ドラコが出て行ってしばらくしたころ突然コンコン、とノックが聞こえドアを開けるとカナリアンイエローのネクタイをした男の子が立っていた。



「ごめんね、コンパートメントがいっぱいなんだ。ここは空いてるかい?」



本当はドラコが取っておいたコンパートメントだが、今は居ないし、戻ってきても3人で座る余裕はあるからいいだろう。



「ええ、空いてるわ。どうぞ入って」

「ありがとう。失礼するよ」



ハッフルパフ生はお礼を言うと、ルイの向かい側に腰を下ろした。



「僕はハッフルパフの5年、セドリック・ディゴリーだよ」



どうやら双子の兄達が(一方的に)ライバル視しているハッフルパフの王子様というのが彼らしい。確かに顔は文句なしの爽やかイケメンで性格も良さそうだ。



「あなたがセドリックなのね! 私はグリフィンドールのルイ・ウィーズリーです。あなたのことは双子の兄達から聞いてます。とても優秀だって」

「いやいやそんなことないよ。双子ってフレッドとジョージ? 2人にはいつも頭が硬いって言われてるよ。僕には彼らのようやユーモアはないからね」

「そうです、フレッドとジョージの双子。あの双子の頭が硬い発言は頭が良いってことを意味しているんですよ。今年首席になったパーシーにも言って…まぁ、確かにパーシーは融通がきかないところがあるんですけどね。それにあの双子はユーモアと行動力がありすぎて困りますよ」



確かに大変そうだ、とセドリックはウィーズリー一家を想像して苦笑いした。ただでさえ広いホグワーツの隅から隅を使ってはしゃぎ回っている2人は、家の中に留まっていられないのだろうと。

それからたわいもない話を2人は続けた。成績優秀でクィディッチの選手であるセドリックの話はバラエティーに富んでいたし、何より聞き上手でもあった。夢中になって話しこんでいるうちに、いつの間にか時間が経っていたようで汽車がゆっくりと減速した。



「あら、もう着いちゃうの!? まだローブに着替えてないのに!」

「いや、まだ着かないはずだけど…壊れちゃったかなこの時計」

「ううん、その時計壊れてないと思う。だってここ駅じゃないもの。なんで止まったのかしら…」



何が起こったか外を覗こうと立ち上がった瞬間、車体がガタンッと揺れ、ルイはバランスを崩した。



「あの、その……」

「ごごごめんなさいっ!」



ルイが倒れそうになってしまったところをセドリックが支えた。いきなりのことで思わずルイがセドリックに抱きつくような体制になってしまったのだ。2人はパッと離れたが、真っ赤に染まった顔はすぐに直らなかったず、気まずい空気になってしまった。幸い揺れと共に明かりも消えてしまったため顔を見られることはなかったが、それでもお互いどうしていいか分からずキョロキョロ落ち着きがないまま立っていると、一気に周りの温度が下がったような気がした。

只事ではないと冷静になった2人が杖を出すと、ドアがゆっくりと開いた。暗くてよく見えないが、ドアの向こうには大きな影、生きている人間とは思えない手がドアを引っかけていた。

____シリウス・ブラックがアズカバンから脱走____

その言葉がルイの頭を過ぎる。何故今そんなことが頭に浮かんだのか分からない。アズカバンなんて…

そうだ。これはディメンターだ。アズカバンの看守の。脱獄したシリウス・ブラックを探しているに違いない。

そう考えついたルイの行動は早かった。エクスペクトパトローナムと呪文を唱えると、小さな銀色に輝く子猫の形をしたパトローナスが、ディメンターを追い払った。はあ、と力が抜けたルイは座席に座り込んだ。


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