燃え落ちる

彼女が夏はこれをするのが決まりなんだぞ、と花火を持ってきた。
短刀達ときゃいきゃいはしゃぐ姿は、とてもかわいらしくて。
僕もつい調子に乗って両手に6本花火を持って振り回したりして皆に笑われてみたり。
伽羅ちゃんはそんな僕達を仕方のない奴らだ、と眺めていた。
「君はやらないの?花火」
「俺はいい」
そこへ彼女もひょこっと顔を出す。
「やらないのか?皆でやるのは楽しいぞ?」
「構わないでくれ」
「そう言わずにやろう?伽羅ちゃんと一緒にやりたいな」
「そうだぞ、大倶利伽羅もやろう?」
「どうして俺に構う」
「大倶利伽羅がかわいいからだ」
そう言って彼女は縁側に座っていた伽羅ちゃんを連れ出し短刀達と一緒に花火を始めた。
「光忠も来い」
「僕も?」
そうして連れ出され僕も花火に興じる。
シャアアアアアと、火薬が燃え火花が散る。
「やはり驚きが必要だろう?」
と、突然鶴さんが打ち上げ花火を上げる。
これには皆びっくりしたけど、すぐにその美しさに見とれ歓声が上がる。
「何事か?!」
と長谷部君が飛び出してきた。
いや、長谷部君だけでなく音に驚いた皆が庭に集まってきた。
皆は花火をしているのだとわかると、もう一度見たいと言い出した。
彼女が鶴さんに尋ねる。
「鶴丸、今のもう一度いけるか?」
「お、いいのか?任せておけ!」
そういうと鶴さんはもう一度花火を打ち上げる。
ドォンという大きな音。
そのあとに空に咲く花火。
儚く咲いて散る、夏の花火。
それに僕は人の生を重ねずにはいられなかった。
つい、彼女に視線を送ってしまう。
すると、彼女も僕を見ていたようで視線が合う。
「光忠?」
「ん?何だい?」
「線香花火しよう?」
「もうシメ?」
「あぁ、もうお仕舞い」
彼女は僕を連れて皆とは少し離れたところに蝋燭を持ってきた。
手渡された花火に火をつける。
先ほどの花火とは違い静かに燃える花火。
「シメはやっぱりこれね」
「そうだね」
「…いつかこの生活にも終わりが来るのかな…」
そう、あまりにも寂しげに呟くものだから…僕も悲しくなってきてしまう。
「君はどうしたいの?」
「ずっと光忠といたい…離れたくない…」
「かわいいことばかり言うんだから」
「やっぱり光忠に神隠ししてもらうのが一番いい方法な気がしてきた」
「そんなこと言って何十年か経って文句言われるのは嫌だよ?熟年離婚て問題になってるんでしょ?」
「私は光忠と別れたりしないわよ」
「僕だって君を離すつもりはないけどね」
線香花火は微かな音を立てて燃え落ちる。
燃えて残った花火の名残を水の入ったバケツに入れ、火の始末をした。
立ち上がろうとした僕の手を彼女が引っ張る。
何事かと思って顔を寄せると、唇を塞がれた。
軽く、触れるだけで離れたけど…僕の情欲を煽るには充分すぎた。
「あとで私の部屋でね?」
なんて…。
蝋燭をバケツを持って短刀達の火の始末も確認しに去っていく。
僕は火照った顔を押さえながら俯く。
「光忠、顔がにやけているぞ」

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