雲外蒼天-天女編- | ナノ


▼ 変化した日常-02-


『はー、やっと終わった。』

事務室の自分の机にごんっとおでこをつける。またこんな時間になっちゃったか。
蝋燭の灯りは、蝋が尽きかけているせいでゆらゆらと頼りない。だが、辺りはだんだんと闇が薄くなってきていたので灯りに困ることはなかった。

あのあと、保健委員会のみんなを食堂に向かわせてから1人残って薬の調合を黙々と取り組んだ。元々彼らにさせるつもりのなかった薬の調合もしていれば、あっという間に時間は過ぎていて真夜中になっていた。

その後、事務室に帰り机の上に山積みにされている書類を片付け始めたのだ。で、気づけばこんな時間。はあ、後一刻もしないうちに生徒が起き始めるだろうな。その前に風呂で体だけでも洗うか。
そう思い立った俺はよっこいしょ、と机に手をついて立ち上がり風呂場に足を向けた。


***


風呂から帰って自室に戻るころには、朝日は顔を出していて結局今日も一睡も出来なかった。まぁいつもの事かと割りきって、早めの朝餉を食べるために食堂に向かう。
ふと、食堂のおばちゃんはもういるのだろうかと考えたが、最終自分で作ればいいし、それにおばちゃんの朝餉も作ってあげられるなー、なんて思った。

だが食堂のおばちゃんの朝はやっぱり早く、もうすでに朝餉の準備を始めていた。

『おはようございます。ふふ、おばちゃんはやっぱり朝早いですね。』
「あら!おはよう蓮夜くん。」

元気のいいおばちゃんの顔を見れば、徹夜の疲れなんてあっという間に吹っ飛んでいく。うん、今日も頑張れそうだ。

『俺もお手伝いしますよ。』
「あら、そう?でも悪いわよ。それに蓮夜くん、最近いろいろ大変でしょうから。」

少し悲しそうに眉を寄せて笑う食堂のおばちゃんに俺は、そんなこと無いですよとくすくす笑う。そう、本当に大したことはしてないよ。俺にできる範囲のことしか出来てないしね。

『それに、俺は久しぶりにおばちゃんと一緒に仕事したいです。』
「うーん、それは嬉しいんだけど……。」

おばちゃんと一緒に仕事するのは楽しい。いつも元気を分けてもらえるから好きなのだ。だから一緒に仕事したかったのだけど。しょぼんとした俺を見かねたおばちゃんは、やれやれ、と呆れたように笑った。

「じゃあお手伝いの前にこれ食べてね。それから仕事を手伝ってくれるかしら?」

おばちゃんから渡されたのは2つの握り飯。握り飯を受けとれば、おばちゃんはいつものように「お残しはゆるしまへんでっ!!」と優しく笑った。

『いただきます。』

手にした握り飯はとても温かかった。



prev / next

[ back ]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -