雲外蒼天-天女編- | ナノ


▼ 変化した日常-01-


あれから数日。
相変わらず上級生は天女様の側に金魚のフンごとくくっついて頬を染めたり、愛を囁いたりしていた。
俺はと言うと、学園長の許可も下りたので自分の仕事を終わらしてから学園内を走り回っている。

『入るぞー。』

こんこんと戸を叩いてから、保健室の扉を開けてずかずかと部屋の中に入る。そして部屋をぐるっと見渡した。えっと、数馬に左近に伏木蔵.乱太郎…。

『よし、みんな揃ってんな。じゃあ委員会始めようか。』
「「「「はい」」」」

ここにいる全員が元気よく返事を返してくれる。それに笑って答えた。
そう、俺は全ての委員会を順番に回っている。上級生が委員会に来ない今、下級生だけで出来る仕事なんて限られてくる。委員長や作法などはまだなんとかなるとして、他の委員会は下級生だけではどうにもならない。



保健委員会は、配合がかなり緻密で難しい薬も作ったりしなければならないし、少し扱いを間違えれば毒になりうるものもある。

用具委員会は、学園内の全ての武具.武器等の備品管理に整備。上級生でも大変な重労働。

会計委員会は、各委員会の予算決めや支出計算をしたり、学園内の全ての帳簿を扱い運営の一端を担っている。

図書委員会は、本の配架・蔵書点検。それに下級生には見せられない持ち出し厳禁の禁術書や今まで学園が集めた各国の城の情勢.軍備規模.関係性などが書かれた書物もあったりする。

体育委員会は、いけどんマラソンと称しての学園近辺の偵察や学園を狙う輩の始末。

火薬委員会は、火薬の使用管理や保管だけだが取り扱いはとても危険。たとえ火種を持っていなかったとしても何が引き金で大惨事になるかわからない。

生物委員会は、飼っている生物の管理に世話。それにこれは教職員と一部の忍たま、もちろん生物委員の下級生も知らないが、学園を狙う輩達が差し向けてきた猛毒を持つ動物や昆虫も密かに飼っていてその世話もしなければならない。

……やらなければならない事は山ほどあるのだ。



今日は保健委員会に出る前に図書委員会に寄ってきたので、始める時間が少し遅くなってしまった。陽がゆっくりと沈んで、外はすっかり暗くなっている。ある程度の仕事が終われば、俺はみんなに声をかける。各々が作業の手を止めてこちらを向いた。

『さあて、やることも大方終わったことだし、みんなは夕餉を食べに行きな。』
「え、でもまだこの薬の調合が終わってません。」
『後は俺がやっておくさ。ほら、早く食堂に行かなきゃ定食が無くなっちゃうぞ?』
「でも………。」

顔を見合わせる彼らに俺はクスクス笑う。俺なんかに気を使わなくてもいいのに。

『うーん、俺が調合するのが心配?』
「いえ!そういう事じゃなくて、」

眉を寄せて困り顔でそう聞けば、数馬がぶんぶんと手を振りながら慌てて否定する。

『なら俺に任せて?俺がやりたいんだ。』

にこっと笑えば彼らは何とも言えなくなって、申し訳なさそうな顔をしながらもコクリと頷いた。ふふ、意地の悪い聞き方しちゃったな。でもそうでも言わないと、みんな行かないだろうしね。



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