「それにしても同じ日に同じ酒場で、なんて、久しぶりですよね?」


「あー、まぁねぇ」


なんだか歯切れが悪い。


「ファジーさん?」


「いやまぁ親心ってやつじゃないかい?」


あ。


もしかして。


「私のため・・・?」


「あたい、ちょっとあの店に用があるんだった!贔屓はゆっくりおいで!」


少し頬を染めたファジーさんは、早足でド派手なピンクのネオンが点いた店に入った。


補給に寄るついでにここで落ち合えるよう、船長がリカーにカモメ便を飛ばしてくれたのかな?


もしかしたらファジーさんが船長に掛け合ってくれたのかもしれない。


うん。頬っぺた赤くしてたってことは、きっとファジーさんだ。


「よぉ、ねーちゃん!」


ニヤニヤと空想に浸っていたから、腕を掴まれるまで気付かなかった。


「オイ!無視してんじゃねーよ!」


「痛っ!なんですか?」


ガラの悪そうな男達。


「オレらと一緒に飲もうぜ?」


あー。めんどくさ。


「いいですよ!どこ行きます?ってか歩きづらいんで、手ぇ離して下さい」


「ん?やけに物分かりのいいねーちゃだなぁ」


ニタニタとしたり顔で覗き込む男。


「おっ、上玉じゃん!ラッキー」


私はアンラッキー。


「こっちこっち」


男二人に挟まれて、小汚ない裏道に連れ込まれそうになる。


けど、ダッシュして反対の道に走って逃げる。


「おいこら、待ちやがれ!!」


待ちません!


「クソー、あの女、コケにしやがって!!」


ド派手なピンクネオンの店に駆け込む。


「はぁっ、はぁ・・・」


「おや、贔屓?どうしたんだい?」


丁度会計を終えたらしいファジーさんと会えた。


「や、変な人に、絡まれちゃって、逃げてきました」


ここがランジェリーショップで助かった。


「あんたはどこに行っても変なのに捕まるねぇ」


呆れながらも男達の特徴を問いながら窓の外に目をやるファジーさんは、もう少しここに居よう、と頭を撫でてくれた。


「ありがとうございます」


暫く時間を潰して酒場に行くと、まだ誰も来てなかった。


「食事の前に、軽くやりながら待つとするかねぇ」


ジントニックを注文するファジーさんに倣って、私もキールを注文する。


逃げる時に走ったせいで思いの外喉が渇いていたらしい。


もう一杯だけ注文しようとカウンターを見ると、バーテンダーがグラスを二つ持って、こちらに来た。


「あちらのお客様からです」


カウンターの奥まったところに控えめに座る、綺麗な格好をした男性がこちらをみて、軽くグラスを持ち上げた。


「いい男だねぇ!あたいに惚れちまったんだよ、きっと!!」


相変わらずな物言いにちょっと笑って、グラスを持ち上げて頂きますとお酒をくれた男の人に合図をした。




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