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今、この部屋に居るのは俺と清隆寺の二人だけで。
その内、俺は喋ってないからやっぱり今の声は…
「オイ、聞いてんのか下僕。俺様の言葉を無視するなんて覚悟出来てんのか。ああ?」
さっきよりも何オクターブか低い声で明らかに不機嫌そうに眉間に皺を寄せて睨んでくる清隆寺に思わず一歩後退る。
「き、聞いてます」
今度の敬語は緊張してるからとかじゃなくて自然と敬語になった。
緊張してるっちゃあしてるけどな。
主に恐怖で。
俺はちゃんと目を見て答えたけど何か清隆寺の顔がますます怖くなる。
「テメェ…俺を睨むなんて覚悟できてんだろうな?」
睨んでない睨んでない!
目付き悪いのは遺伝だから!代々うちの家系は目付き悪いんだよ!
背も高いし目付き悪いけど俺は人畜無害だから!
おまけに情けないけど小心者だ悪いか!
なんて今の状況で清隆寺に言える筈もなく固まっている。
これが本当にあの清隆寺…?
実は双子の兄弟とか…
黙っていると急に吹き出すように清隆寺が笑い始めた。
「はははっ!どいつもこいつも俺の素を見たら同じような反応しやがって。テメェも周りの馬鹿共と一緒で俺を可愛いだの抱きたいだのって思ってたのかよ」
俺を見上げてくる男は本当に人を見下すような目付きで睨んでくる。
一頻り笑い終えてソファの真ん中にドンと座り急に口許に浮かべていた笑みが消えた。
「バーカ。あんなの演技に決まってんだろーが。頭悪ぃな」
至極面倒臭そうに話しているかと思えば急に笑顔になる。
今までの邪悪な笑みじゃなくて昔に見た時のような優しい笑みだ。
「そういう訳で下僕、この事を周りにバラしたらテメェのチンコ握り潰してガチホモに犯させるからな」
笑顔と台詞が一致しない脅し文句に身体が恐怖で身震いした。
ああ、世の中そんなに上手くいくはずないよな…
「は、はい。言いません…」
小さく頷いて俺はこれから高校生活三年間を想像して酷い頭痛を感じた。
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mokuji]