肉食系ラビット | ナノ


 


清隆寺雅兎は中等部の頃から知らない人は居ない程の有名人だった。
男子しか居ないこの学園の中でも飛び切りの美形だからだ。
この学園に長年居ると男性同士の恋愛に目覚めて美形を崇拝しあわよくば肉体関係を持とうとする。
俺もその一人か、と聞かれると違うけど。
でも少なからず、清隆寺雅兎には憧れを抱いている。

中等部の時、一度だけ彼の姿を見た事がある。
広い学園だと同じ学年でも滅多に会わない生徒だっている。
ましてや美形は周りにファンやらが居るから平凡な俺が簡単にお目に掛かれるなんて事は無かったのに。
たまたま、部活が終わった後忘れ物を取りに教室に取りに行った時に彼と擦れ違った。

俺よりも幾分か小さく華奢な体に女の子に見間違える程の可愛らしい顔立ちなのに堂々と胸を張って凛とした出で立ち。
ただ歩いているだけなのに凄く存在感があって彼を包んでいる空気が違った。

『君、まだ残ってたの?早く帰らないと暗くなってしまうよ』

当時、生徒会役員として見回っていた彼は初めて会った一般生徒の俺に優しく笑い掛けてそう言った。
大概の美形は自分と同等かそれ以上の美形以外の存在には話し掛けたり気遣ったりしないのに彼はそんな奴等とは違った。
よく通るあの声を今も俺は忘れない。


俺はあの日から、清隆寺雅兎に一人の男として憧れを抱いている。
俺もあれ程の器の男になりたい、と。


 


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