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それからというものの、帝までが面白がって便乗したもんだからアキが作った可愛らしい、ほんと女の子って感じの歌ばっかり練習した。
まだ未熟でも一応歌い手なんだから拒むなんて出来ない。
恥ずかしいけど、歌自体は凄く良いし可愛いし。
だからちゃんと一生懸命歌った。
途中でお昼ご飯を食べたり休憩を挟みながら練習に夢中になってたらあっという間に夕方になった。
時間が経つのって早い。
「もー、最っ高に燈瑪可愛かったーっ!練習でも本番って感じっ」
「練習だけど本番のつもりで練習してるからね」
ステージから降りるなり桜慈が抱き着いてきた。
頬擦りしてくるのは嬉しいけど練習でちょっと汗掻いちゃったからくっつくの申し訳無いなぁ。
「お疲れ。やっぱ燈瑪の歌声好きだ」
陵も近付いてきて頭を撫でてくれる。
ちゃっかり褒めてくれて照れちゃう。
あれ?いつの間にか徹の姿が無くなってる。
「陵、徹は?帰った?」
桜慈の頭を撫でながら聞いたら陵が無言でステージを指差す。
その先にはマイクスタンドの高さを調整してる徹の姿が。
「燈瑪、聴いててくれよ」
マイク越しに徹の声が耳に届く。
次の瞬間、演奏が始まる。
khaosの曲だ。
驚いたようにステージを見上げて気持ち良さそうに歌う徹をただ見つめた。
「燈瑪、どう?」
1曲歌い終えて驚いてる俺に首を傾げて聞いてくる。
「上手かった。何か…」
「燈瑪の歌い方に似てる、だろ?」
俺が言いたかった言葉を帝が代わりに答える。
そう、上手かった。
そして俺と歌い方の癖が似てた。
でも似てるだけで徹は声高くないけど。
「高い声は流石に出ねぇけど燈瑪の歌ばっか聴いてるから似ちゃったんだよ」
「これも替え玉作戦の一環だ」
腕を組んで何か偉そうに腕組んでる帝に視線を移す。
あの王道転校生作戦に関係してるのか?
「歌声だけで姫に惚れたぐらいだ。仁志は声フェチな上に歌が上手い奴が好きじゃねぇかと思ってな」
「なるほど」
成る程で良いのかな。
凄く自信満々だけど怪しいなぁ。
現に歌声関係無しに徹にキスしようとした訳だし…あ、徹の声はよく透る良い声だ。
声が気に入ったのかも…!
徹ってこの為に練習してくれたのかな。
俺が知らないだけで元々上手かったのかもしれないけど。
本当に良い奴だ。
「これからは俺もたまに一緒に練習するからな。会長から逃げ切ろうぜ」
「うんっ」
ここまで対策を練ってたなんて。
このまま本当に1年、会長から逃げきれるような気がしてきた。
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mokuji]