声に乗せて | ナノ
練習

 


中に入ると相変わらず薄暗いスタジオ内。
スタジオとか普通は電気付けたら明るいんだけどどっかの我儘がステージ以外の電球を減らせって言ったから薄暗い。
その我儘が自分専用の一人掛けのソファに座ってふんぞり返ってる。
全ての元凶である帝が。
しかも若干不機嫌っぽい。

「遅ぇ」

久し振りに会ったのに第一声が遅いだなんて。
いとこなんだから「元気だったか?」ぐらい…言わないよな。帝なら。

「まだ10時前じゃ「遅ぇ」

人の話を聞け!
まぁ、今更だから言わないよ。
相変わらずの横暴っぷりに溜息が漏れた。

「帝っちったら、早くお姫様に会いたかったからって〜、いたっ!いたっ、帝っち痛いって!」

帝の機嫌を取ろうとしてかアキが近付いて切り込んでくれたけど何回も蹴られちゃってる。
ごめん、助けられない。
軽くでも帝の蹴りは痛いと思うし。

「まぁ良い。燈瑪、準備しろ」

アキを蹴って気が済んだのか帝の声に頷いて1人奥の部屋へと行った。
練習する前に発声の練習をしないと満足する声が出ない。
皆の前でちゃんと歌うの久し振りだから緊張するなぁ。
桜慈達の前で歌っててもやっぱ緊張する。
最初は生徒会長の話を聞いて驚いたけどどんな理由でもまた歌えるのは嬉しい。
地味にまた歌える時の為に練習してきた訳だし。

数十分発声練習をした頃、ノックが聞こえた。
これもいつも、練習する前に欠かせない習慣。

「千尋、入っていいよ」

声を掛けるとドアが空いて千尋が入ってきた。
山下 千尋(やました ちひろ)はうちのドラム担当。
千尋の手は特製のハーブティーが入った水筒を持ってる。
意外と家庭的というか料理が得意な千尋は俺の喉を気遣って毎回ハーブティーを用意してくれる。
程好く甘くて本当に喉に優しい。

「いつもありがと」

「気にしなくていい。燈瑪の為だ」

何か照れ臭いな。
水筒を受け取ってハーブティーを飲むと喉も精神的にも落ち着いてきた。
これ、ほんとに美味しいなぁ。


 


[*prev] [next#]
[mokuji]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -