声に乗せて | ナノ
久し振り

 


でもおかしい。
声は確かに知ってるけど。
その声が記憶の中にある外見と一致しない。
だって、あいつは派手な見た目で美形…あ。
確か王道転校生も派手な見た目を隠す為に変装してるんだっけ。
じゃあやっぱり…

「お前、徹…?」

「正解!流石燈瑪だな」

考えが纏まったところで懐かしい名前を呼ぶと徹はカツラと眼鏡を外して立ち上がり、立ち尽くしている俺を優しく抱き締める。
やっぱり昔からの友達の渡部 徹(わたべ とおる)だった。
どちらかと言えば可愛い系に部類される整った顔に派手な赤い髪。
いつもはライオンのたてがみみたいに立ててんのにカツラの所為でぺちゃんこだ。

「久し振りだね。でも、何でそんな格好…」

まるで王道主人公みたいとは言えずに言葉を詰まらせると代わりに徹が口を開いた。

「王道転校生ってやつらしいぞ。んで、場が盛り上がった時にガバッて外すんだ」

まさか徹が王道転校生という言葉を知ってるとは思わなかったから口を開けたまま凝視する。
しかも変装を解くタイミングまでバッチリ把握してるし。

「でも、何でわざわざそんな格好してんの?」

今、一番の疑問はそこだ。
徹に隠す理由は無い。
見た目が派手でヤンチャだけど普通の高校生だ。
暴走族にいるとか族潰しとかしてるわけでもないのに…


尋ねるなりさっきまで笑っていた徹は真剣な表情を浮かべて俺を真っ直ぐ見つめた。



「それは、燈瑪を守る為だよ」


 


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