声に乗せて | ナノ


 


「え、この時期に?」

今は5月だ。この時期に転校って…まぁ、別にいっか。隣のクラスなら同学年か。会う事あるかな。


「うん。トイレで見掛けたんだけどさ、髪がもさってしてて眼鏡が分厚かった。あと、やたら声がでかかった」


その言葉に少し驚いた。
聞く限り、桜慈が言う王道転校生みたいだなぁ。
こんな奴いるわけないって思ったけどいるのか。
え、じゃあいきなり俺とお前は親友とか言われたりする?
嫌だ困る。空気読めない人困る。


「おーい。どうかした?」

「え、あー…うん?」


俺が分からないというように首を傾げると溜息が聞こえた。
俺は言いたくない事とか適当に誤魔化す癖がある。
だって、言いたくないし。王道転校生とか言っても桐野は分からないはずだし。
桐野も俺の癖を知ってるからそれ以上は転校生の話をする事なく一方的にkhaosについて語る桐野に適当に相槌を打って食事を楽しんだ。


放課後になる頃には学園内は転校生に関する色んな噂が飛び交った。
転校生が書記と食堂でキスした、だとか。
面白がって顔を近付けてきた生徒会長を殴った、だとか。
あまつさえ、親衛隊総取締役に俺のもの宣言された、だとか。


本当に王道転校生なんているんだな、って再確認した。
桜慈に話したら目をキラキラさせて喜ぶだろうなぁ。
桜慈の嬉しそうな顔を考えただけで締まりない笑みが溢れた。


 


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