声に乗せて | ナノ


 


「冗談はさておき、俺はお前らに仁志の動きを伝えに来たんだよ」

さっきまで怒る徹を笑いながら宥めてたみっちゃんが真剣な顔になって静かに話し始めた。
まず個人情報を弄ってるから確証はないらしいけど徹が真白の弟だって事に薄々気付いてる事。
その徹と一緒にいたのが白の王子様は姫を知ってるんじゃないかと推測して探してる事。
そして今は徹に全く興味を示してない事。


「全くって…俺、桜慈の指示通り頑張ってたのに…好かれても困るけどさ」

「あれ桜慈ちゃんのアイディアか。いやー、なかなか面白かったぞ」

「面白がるな!」

徹ががっくり肩を落としてる。
色々と犠牲にして頑張ってくれてるのに効果なしじゃあさすがにショックだよな。
しかも俺が陵まで巻き込んだから自分で追い詰めちゃったし…どうしよう。

「取り敢えず吉川、お前は噂通り徹に惚れてるフリしろ」

「……はぁ?」

「この噂が嘘だってバレたら発信源の燈瑪が疑われる。それにお前が絡めば仁志は少なからず徹に興味持つだろ」

ああ、陵の顔が怖くなってく。
みっちゃんいわく、陵と会長は犬猿の仲と言っても会長が一方的に敵対視してる。
だから陵が徹に好意を持ってれば絶対邪魔して奪うぐらいはする、という事らしい。

「徹は整った顔だから上手くいけば真白さんの弟と気付いてても食いつくかもしれねぇしな」

「兄貴も似た事言ってたな」

この作戦も桜慈の作戦も徹だから出来る事なんだよね。
何てったって会長はかなりの面食いだ。
今まで手を出した人は男女問わずモデルやモデルに負けないぐらい美形な人達だけと聞いた。
だから俺は何がなんでもバレちゃいけない。
愛しの姫が平凡な男だなんてバレたら何されるか分かったもんじゃない。
キレて暴れまくるかもな、なんてのんきに笑いながら言ってた帝の姿が頭に過った。


 


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