天使
薄暗い個室は落ち着いた。
間接照明が妖艶に輝いていた。
向かいに座った彼はメニューを見ている。
下を向いている彼をいいことに見つめてみる。
髪がさらさらだな。
黒い服を着ていた。
そのおかげで彼の色白が目立つ。
私より白いんじゃないかな。
もともと色素が薄い系の人だけどね。
髪の毛の色も胡桃色で可愛い。
引き締まった薄いピンクの唇に目がいく。
ほんとに男かわかんないよ。
頬杖をついて悩んでた。
時折どうしよー、迷うなあーなんて言ってる。
そんなのを見ると頭を抱えてしまう。
両手で顔を隠して指と指の隙間から彼を見てる。
頬が熱くてモヤモヤしちゃう。
彼が目をぱちくりさせてこっちを見た。
あわてて何でもないよと言うと彼が組んでいた腕の左手を自分の頬に添えた。
ため息をついて何かと思えば、彼は机の下で爪先で足をグリグリしてくる。
なにみてんの?
にやにやしてて気持ち悪いんだけど。
見てるこっちが恥ずかしくなるんだけど。
マシンガンのようにとんでくる言葉に現実に戻される。
見た目は天使で中身は悪魔。
天は二物を与えないのは本当らしい。
私の反応を見て心底楽しんでる。
そろそろ足をのけてもらえるように謝ろうかな。
終
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