豹変
目の前の彼女は泣いていた。
ひきつけを起こしてるようだ。
自分は荒くなった呼吸を抑える。
少し落ち着いて回りを見渡してみた。
彼女の回りには雑誌や服が散乱している。
そこで自分は我に返った。
今日は彼女の家で食事を食べていた。
彼女の作るトマトスープは格別なのだ。
いつものようにスープを頬張っていた。
そのあとはよく覚えていない。
そこから記憶がとんで今に至っている。
自分はこんな状態になるのは三回目らしい。
まだ慣れない彼女は驚きを隠せていない。
こんな風になるのは彼女の前だけ。
親や友達の前ではこんな風にならない。
これが精神疾患なのか脳疾患なのかは分からない。
でも彼女の前だと自分が抑えられなくなる。
今は一先ず、彼女の安否を確認した。
座り込んでいる彼女に目線を合わせるようにして自分も屈んだ。
両手で顔をおおって泣いている彼女の手首を優しく握った。
体が揺れる。
涙を拭うことができない。
自分にはただ彼女を抱き締めることしかできなかった。
自分のことが分からないのに彼女のことが分かるわけがない。
終
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