「鈴蘭」が骸クンと暮らし始めて二日目の午後のことだった。
暇だなぁ、なんて思いながら活字を目で追う。
隣には骸クン。窓からは柔らかい陽射し。ぽかぽかとして体温が上昇して、あ、だめだこれ、ねむい。
そんな風に意識が途切れて、次に意識が戻ったのは頬に冷たい指先の感触を感じたからだった。
この指先を僕は知っている。
いつも剥き出しの背中で感じていた。ふたりで交わる最中に火照る身体ではひんやりとしたそれが存在感を増し、僕は余計にそれを意識してしまって、まるで背中が敏感な性感帯になったかのように、君の指先は快感を与えていた。
それを覚えていた僕の身体は、頬に神経を集中させ、快感を拾おうとする。
でも、何故だろう。
いま君が冷たい指先で触れているのが、白蘭、ではなく、鈴蘭、であるということを思い出した途端に、全てがどうでもよくなってしまったんだ。
僕は瞼を開けた。
霞む視界の中、惚けて優しい表情をした君を確認した。
何もかもが憎らしく思えた瞬間だった。