シャワーを浴びてくる、と部屋を興味深そうに歩きまわる鈴蘭に言い残し、部屋に備え付けられている洗面所に入る。
静かにドアを閉めてから、自然と骸はうずくまっていた。
「白蘭…」
ドアに背を預け目を閉じる。
鈴蘭は、まるで白蘭の生き写しで、見ているのが辛い。
僕を見上げる視線だとか、髪を掻きあげるときの仕草だとか、いちいち白蘭を思い出してしまってどうしようもなく苦しくなる。
「どうして、避けるのでしょう…?」
仕事が忙しいだなんて、あまりにも作られた嘘みたいだ。前だって忙しいから、と言って僕のいる部屋で仕事をこなしていたくらいなのに。
理由は何か、他にあるはず。
嫌いになった?
はっと骸は口元を押さえた。
そうでもしないと叫んでしまいそうだったから。
「……」
ありえなくはない。
永久の愛など、ただの幻想だ。それを十分に骸は知っていた。
何度も何度も巡ってきた生。その度に刻まれた裏切り。
どうして信じられる。
「…クハ…」
シャワーコックを捻り、冷たい水を頭から被る。
冷えた水は冷めた心を更に冷やしていくようで、なんだか落ち着く。ああそうだこれこそが自分。
ひとを信じて愛するなんて、できるわけがなかったんだ。
濡れた服が重くなって貼りつく。
全身が寒気を感じる中で目頭だけは熱いことにひたすらに気付かないふりをした。