「あの」
「なーに?」
「結局、なんできみはここにいるんです?」
口いっぱいに頬張ったパンを咀嚼してから、眉をひそめこちらを見つめる骸クンを見つめ返す。
実は、理由を深く考えていなかった。だって絶対ばれると思ってたし。ただこの姿を見せてどんな反応をするか見たかっただけだし。
しかしその反応は結果として不快になるものだった。
今更、カミングアウトするのもなんだか癪だ。それならいっそこの姿のまま傍にいて、愛されるのも悪くはないのかもしれない。
骸に愛される。
それがどれほどの意味を持つだろう。
「…んとね、白蘭はしばらくしごとがいそがしいから、僕に骸クンのめんどうをみててって」
「ほう?」
「いーよね?」
「僕に拒否権はないような気がするのですが」
苦笑する骸クンは、優しい。
きっとこれを「白蘭」が言ったら、もともとお前に面倒を見てもらっていた覚えなどない、必要ない、などと言われるに違いない。
白蘭の意思は固まっていくばかりだった。
「だから、よろしくね」
「此方こそ」
でも、笑顔を見て一々胸が痛むのには慣れそうにもない。