07
取り敢えず午後の授業には出席したが、頭から雲雀さんに没収されたギターが離れない。
没収されただけならまだいい。
壊されたりしてたらと思うと気が気でない。
あれはあたしが音楽と真剣に向き合うきっかけになったギターだ。
何としても取り返さなきゃ…。
だけどあの雲雀さんが相手だし、どうやって取り返そう。
風紀委員会は応接室使ってるんだっけ?
きっとあたしのギターもそこにあるはず。
雲雀さんだってずっと応接室にいるわけじゃないだろうし、いない時を狙って忍び込むか…。
うーん、でも見張りいそうだよね…。
放課後、一先ず帰りの支度をしていると山本が「よ!」と片手を挙げて近寄ってきた。
獄寺も一緒だ。
「なぁ、音ノ瀬。
おまえのギターのことなんだけどさ、ヒバリに返してくれってオレ達で頼んでこようと思うんだけどさ」
「え?!気持ちは嬉しいけど、あんた達には関係ないじゃん。
それにあの雲雀さんだよ?無事に済むとは思えないよ」
「け!だからだろ、アホ女!てめーだって一応女なんだ。
それ以上怪我させるわけにはいかねーんだよっ
それにギター持っていかれたのだって少しはオレも関係してるしよ」
「で、でも!」
「オレも一緒に行ってくるよ」
「ツナも?!」
「獄寺君じゃないけど、持っていくの見送っちゃったオレにも責任あるし。
ヤバくなったら逃げるし。雅ちゃんはここで待っててよ」
「じゃ、まぁそーゆーコトで!ちょっと行ってくるな!」
止めようとするあたしの肩に手をかけて、山本が押さえつけるように椅子に座らせると3人は教室を出て行ってしまった。
…な、何カッコつけてんのよ。バカ…!
脱力して机に突っ伏す。
確かに自分で行くのは怖かったけど、誰かに助けてもらおうとは思ってなかった。
慣れない女の子扱いに、くすぐったくて顔が赤くなる。
普段バカばっかりやってるのに、男の子ってよく分かんない…。
あそこまで言ってもらって嬉しくないわけじゃないし、あいつらが頼りにならないってわけじゃないけど。
あの雲雀恭弥だよ?並盛最強の風紀委員長だよ?
―――やっぱり心配だし、見に行こうかな…。
あいつらの顔を立てて待ってようかとも思ったけど、やっぱり自分のギターのコトだもん。
自分で行かなくちゃ!
ガタンッと椅子から立ち上がって、教室のドアに向かうと3人が帰ってきた。
早っ!!
3人は何ともバツが悪そうな表情だ。
「だ、大丈夫だった?」
「うん。怪我はしてないんだけど…全く取り合ってもらえなかった」
ツナがガックリ項垂れる。
まぁそうだろうと思ったけど。
山本も頬をぽりぽり人差し指で掻きながら説明する。
「ヒバリ、『風紀が乱れるからダメ』の一点張りでさ。そのまま町の巡回に出掛けちまって…」
「けっ!何が風紀だ。野郎…マジでムカつくぜ!」
獄寺は苛立ち紛れに近くの壁を蹴った。
ツナがあからさまにビクッと身体を震わせる。
それに気が付いた獄寺が「すみません、10代目!」とペコペコ頭を下げる。
ツナと獄寺って不思議な関係だよね。
獄寺自身はもうなんていうかツナにゾッコンな感じだけど、ツナは獄寺と友達なのに怖いのか…?
獄寺に謝られながらツナが口を開く。
「明日また行って頼んでみるよ。
どっちみち今雅ちゃん手痛くてギター弾けないでしょ?」
「うん…。でも明日は自分で行くよ。
やっぱり自分のギターだし、返してくれるか分からないけど雲雀さんにお願いしてみる」
「それなら一緒についてくぜ!な、ツナ、獄寺!」
「お、おぅ。仕方ねーな」
「うん、ひとりじゃ心配だし行かせられないよ」
「…ありがと」
明日、昼休みに応接室にみんなで行くコトになって、その場を解散した。
ひとりで行くより断然心強い。
3人の優しさが、素直に嬉しかった。
2008.9.14
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