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22


くぅ〜!
遅刻見逃してもらった上に、雲雀さんと一緒にお弁当食べる約束しちゃったよ。
しかもまた歌聴いてくれるって…!

3時間目と4時間目の間の休み時間。

自分の席でさっき逢った雲雀さんを思い出してニヤニヤしてたら、ツナが気味悪そうに振り返った。
ツナと一緒に話していた獄寺と山本も同じ様な反応でこちらを見ている。


「ど、どうしたの雅ちゃん。遅刻して先生に怒られたのに、ご機嫌だね」

「ご機嫌だなんて〜。やだ〜、そう見える〜?」

「あ、明らかにテンション可笑しいじゃねーか」

「だな」

「えー、そう?うふふ」


元々すぐ感情が顔に出るタイプのあたしが、隠せるわけもないんだけど。
へらへら笑うあたしを見て並盛トリオの顔は一斉に引き攣った。
獄寺はあからさまに仰け反った。


「き、気持ち悪ぃ…」

「酷いなぁ〜獄寺。一緒にライブした仲じゃないの〜」

「よ、寄るな!アホがうつるッ」

「ま、まぁまぁ獄寺くんも雅ちゃんも落ち着いて!
 …で、雅ちゃん何があったの?」

「…聞きたい?」


山本とツナがうんうんと頷く。獄寺は「けっ」とそっぽを向いた。


「実はね…」

「「実は…?」」

「雲雀さんと一緒にお弁当食べる約束しちゃった!」

「「「えぇ?!」」」


あ、獄寺しっかり聞いてら。
並盛トリオはさっきとは比べ物にならないほど仰け反って驚いた。
ツナなんて驚き過ぎて顎外れそう。


「うっふふ〜」

「…て、何で喜んでんだよアホ女」

「…へ?」

「おめーあんなにヒバリ怖がってたじゃねーか」


獄寺の言葉に笑いが止まる。


「…そう、だよね。何で喜んでんだろ、あたし。変だよね」


獄寺の言うとおりだ。
あたしあんなに雲雀さんのこと怖いと思って、みんなにも庇ってもらって…。
急に笑うのを止めたあたしの顔を怪訝そうに山本が覗き込む。


「…音ノ瀬?」

「へーきへーき!何でもないよ。自分でも理由がよく分かんなくて。
 お弁当一緒に食べるのは兎も角、雲雀さん…あたしの歌を認めてくれて、また聴いてくれるって。
 あー、それが嬉しいのかも!」

「本当に音ノ瀬は歌うの好きなのな」

「うん!」


にっこり笑って言うと山本は何故かちょっと斜め上を見て、頬をぽりぽり人差し指で掻いた。
ん?何かちょっと照れてるみたい?


「そうだ、話変わるけどさ。音ノ瀬今度の日曜、空いてる?」

「あ、野球の試合だっけ?」

「あぁ。暇だったら観に来ね?ツナ達も応援に来てくれるって言うしさ」

「言っとくがな、オレは10代目にお供するんであって、てめーの応援じゃねーからな!」

「はは!ホント獄寺って素直じゃねーのな!」

「んだと!この野球バカッ果すぞ!コラ」

「あぁ!獄寺くん!ダイナマイト仕舞ってー!」


毎度毎度、あんたらお笑い芸人ですか。
懐からダイナマイトを取り出した獄寺をツナが必死に止めている。
ダイナマイトを見た山本は「お!また花火か?それ今度の試合で上げてくれよ」なんてにこにこしながら言っている。
山本、まだ花火だと思ってるの…?
あたしですら本物のダイナマイトだと知ってるのに…天然恐るべし。


「うん、行くよ。その代わりちゃんと活躍してよね!」

「おう!任せとけ!」


あたしの答えを聞いた山本はニカッと笑ってスイングの真似をした。
山本もホント野球好きだよね。あたしの歌好きと張るわ。
でも頑張ってるヒトっていいよね。
クサい言い方かもしれないけど、それだけで輝いて見える。
あたしも山本に負けてられないな。歌、頑張らなきゃ!


***


お昼休みのコトを考えるとソワソワして落ちつかなかった4時間目の授業が終わり。
あたしは素早くギターを背負い、鞄からお弁当を取り出すと足取り軽く応接室に向かった。
応接室のドアをノックしてガラガラと開ける。


「雲雀さん!お迎えに上がりましたよ〜」

「ん…もうそんな時間かい?」


机で書類らしきモノを見ていた雲雀さんは、顔を上げると時計を確認した。
書類を机に投げ置くと立ち上がって、椅子の背凭れに掛けてあった学ランをサッと羽織った。
その動きには無駄が無くて、凄く優雅。
あたしの傍まで来た彼は「じゃ、行こうか」とフッと微笑んだ。
その瞬間、トクンとあたしの心臓が小さく跳ねるのが分かった。

歩き出した雲雀さんについて行くと屋上に着いた。
彼は梯子を上って給水タンクの所まで行く。あたしも後に続いた。
雲雀さんに初めて歌えって言われたのもこの場所だった。
あれから暫く来なかったけど、ここはあたしの好きな場所。
もしかして雲雀さんも好きなんだろうか。
まさかここで一緒にお弁当を食べるとは、あの時は夢にも思ってなかったなぁ。

給水タンクに背を預けて座った雲雀さんの隣にあたしも腰を下ろす。
彼は学ランのポケットから缶コーヒーとサンドイッチを取り出した。
雲雀さんの学ランって色んなモノ入ってるな…。
それにしても食べ盛りの男の子にしては少なくない?


「雲雀さん、それだけですか?」

「あぁ、今日はね」

「それだけじゃお腹空いちゃいません?」

「…何?君の分けてくれるの?」


雲雀さんはあたしのお弁当を指差してニヤッと笑った。
え?えぇ?!
自分の膝の上に広げたお弁当に目を落とす。
た、確かに一般女子のお弁当にしては、お、大きいかもしれないけど…。


「君細いのに、いつもそんなに食べるの?」

「わ、悪かったですね!大食いでっ
 歌うと凄いお腹空くんですっ育ち盛りなんです…!」

「ククッ別に僕は悪いなんて言ってないよ」


悪戯っぽく笑って雲雀さんはあたしのお弁当箱から出汁巻き卵をつまんでひょいっと口に放った。
あぁ!あたしの好きなおかず第2位が…っ
母さんの出汁巻き美味しいのに…うぅ…。
雲雀さんは指をペロッと舐めた。


「これ、君が作ったの?」

「いやぁ…母が…」

「ふぅん」


あれ?ちょっと残念そう…?
雲雀さんは缶コーヒーのプルタブを押し上げて開けると、くぃっと飲んだ。
ひ、雲雀さん何も言わないけど「今度お弁当作って来い」オーラが出てる気が……。
普段は母さんが自分達の分と一緒に作ってくれるしなぁ…。
あ、そうだ!


「雲雀さん、次の日曜は何か予定あります?」

「どうして?」

「うちの野球部の試合があるんですよ。あたし応援に行こうと思ってて。
 えっと…それでその時あたしお弁当作るんで、良かったら雲雀さんも一緒に行きませんか?」

「……それって僕をデートに誘ってるの?」

「で、でーとぉ?!」

「ふぅん、雅って結構大胆なんだね」


不敵に笑って言った雲雀さんの言葉に激しく動揺する。
そ、そんなつもりじゃ…!
あぁ、でもお弁当作って野球観戦とか…デート?デートなの?!
あたふたするあたしを見て雲雀さんは益々不敵に笑った。


「冗談だよ。…うん、いいよ。日曜だね」

「あ、はい!歌と違って料理は自信ないですけど、頑張って作りますね」

「…あぁ」


お、今度はちょっと嬉しそう?
でも何であたしの手作り弁当なんか食べたいんだろ。
変なの。


「雅、ボーッとしてると歌う時間がなくなる。僕に聴いて欲しいんだろ?」

「あぁ!はぃっ」


それは困る!
一緒にお弁当を食べるのもいいけど、一番の目的は彼にあたしの新曲を聴いてもらうコトだった!
お弁当を急いで食べ始める。
雲雀さんはそんなあたしを見て柔らかく笑って、またあたしのお弁当箱からおかずを攫っていった。

…後生ですからあたしの好きなおかず第1位のウインナーは残しておいて下さい、雲雀さん。



2008.12.13


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