第三話
ふ、と目を覚ますとどうやらココは保健室ではないらしい事が理解出来た
周りが騒がしく、起き上がってそちらを見ると私の所謂『元彼』がいるらしい
中学時代にフられて、すっきりしながらも転校して…
アレからもう二度と、会うことなんか、無いと思っていた
私が男性に対して恐怖心を抱く様になった元凶が、そこに居る
その恐怖からか、身体が震える
見渡すと今吉先輩は外に出ている様で、何処にもいない
彼は私を目敏く見つけて若松さんと諏佐先輩が「出て行け」と言っているのを聞かぬ振りをして体育館のステージに居る私の元にやって来た
「な、何しに…来た、の…?」
「え?何お前、それ聞いちゃう?良いけどさーwいやさ、俺とお前、ヨリ戻さねぇ?お前男苦手だしどうせフリーだろ?」
どんどんと、私に近づいて来て、身体の震えが止まる代わりに強張る
幾ら他の人に対する恐怖心が落ち着いてきたとは言え、この人は、この人に対する恐怖心は…
「い、いや、嫌!あなたは、あなたは…すぐ…暴力に訴えるじゃない!!、っぐ…っ!!」
「宮原!!」
殴られた?
私の名前を呼んだのは、声で聞く限り若松さんらしい
「は?お前さぁ、あんだけ可愛がったのに何が暴力なわけ?あは、自分可哀相…ってか?笑えるわwお前に拒否権とか存在しねぇし?調子のんなよ?」
可愛がる?冗談じゃない。事あるごとに私に殴る蹴るして、学校での虐めを煽動した張本人がよく言えたモノだ、と思う
「や、来ないで…来ないでよ、裕泰(ひろや)…っ!触らないで、…っ!、ぅぐ、か、は…っ!」
「お前さぁ…、何言ってんの?お前に俺が会いに来た時点で俺の彼女に戻ってんだよ!!」
「秋乃先輩…!!」
「だめ、きちゃだめ、桜井くん!!」
「はっ、後輩には手ェ出すな…ってか?」
「やめて、お願い…ここの人には…!!」
ぐ、と襟を引っ張られた
息が出来なくなり、苦しさが強まる
痛い、苦しい、痛い、苦しい…!!
「…ん?何コレ。おい秋乃、このキスマ何?お前援交にでも手ェ出したのかよ?でも無理だよなァ、あんなに男が苦手で…」
「わ、ったしが、だんせ、い…にがて、なの…っ、は、ひろ、が、げんい…で、しょ…っ、ぅ、」
「はぁ?俺が原因?アレだけ可愛がってて何で?んなわけねェだろ?ん?」
「や、きもちわ、る…ぃ、こ、ない…でっ、ぃや…っ!せんぱ、ぅ、ぐ、ぁ、しょ、いち…っ!!!」
「先輩?何お前、新しいオトコいんの?うっわー、軽く引くわ。ってかさ、来るわけねーだろ。ココじゃねーんだろ、居るの。だったら来るわけ…」
今吉先輩なら気付いて来てくれる、そう思っていた。でも、確かに来てもらえない確率の方が無条件に高い
でも…、でも、それでも。今吉先輩、ともう一度口を開きかけると、ガタン!!と音がする
何の音、と目だけで音の鳴った方に視線をやると、彼が立っていた
「は、…はァっ、…すまんなぁ秋乃、遅れてもうて…さてと、ワシの可愛いお姫さんに手ェ出したっちゅーことは…覚悟は良えよな?」
…あぁ、やっぱり来てくれた…
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