第四話

苦しさで意識が飛びかける
でも、驚きでか裕泰が手を離した

「ぅぐ、っは…!!」

どうやら今吉先輩に興味の対象が移ったらしく、私にはもう見向きもしない

「アンタが今の秋乃のカレシ?なー、秋乃くれねぇ?こいつ良い女だしよォ。あー、まぁ感度があんま良くねえのが問題か?」

「…自分、秋乃抱いたこと無いやろ?」

「は?いやいや、何回もあるぜ?」

「…秋乃、あるか?」

「え、ぁ、ありませ…ぐっ、ぅあ!」

「はー?秋乃お前空気読めよ阿呆。こいつ女慣れしてそうだからちょっと言ってみただけだったのに…」

「まぁせやろなぁ。ワシが初めて秋乃抱いた時、秋乃は自分の事処女って言うてたし」

「…え?何、アンタ秋乃抱いたワケ?うっわー、秋乃ってそんな男好きだったんだー?」

「あ、言うとくと秋乃はワシのこと最初怖がってたで?あと、秋乃はめちゃめちゃ感度良えから」

「もう…どうとでもなれ…」

色々と恥ずかしい話になっている隙に、諏佐先輩が私に部室に行くように、と教えてくれた
どうやらさつきがいて、一応の護衛にと若松さんまでがいるらしい
さつきは私がさっきから殴られ蹴られしてるのを見て、手当ての準備をしてくれているんだそうな
本当に優しい子だと思う。料理は壊滅的だけど

「秋乃はやらんで?お前に渡したら秋乃は自殺しそうやし」

「んなワケねぇじゃん、俺はちゃんと秋乃のことスキだぜ?」

「残念、ワシは愛しとる。つまりワシの勝ちやな」

「うわ、歯ァ浮く…じゃあどんなとこが好きなワケ?」

「例えば凄いクールな割に優しいとことかやなぁ。後はスイッチ入ると甘えてくるとこと、ヤる時異常に色っぽいことと、ヤった後にキスしてもう一回ヤろうとすると顔真っ赤にして怒るとこと、ワシ以外の男に微塵も興味が無いことと、男子にはビッチと思われとったけど実は処女だったとこと、恋愛偏差値高そうに見えてめちゃめちゃ低いとこと、予想しなかったことがあるとクールそうな感じが無くなってパニックになってワシに頼ってくるとこと、二人きりの時ワシの膝に乗せるだけで恥ずかしがるとこと、寝てる時に起こそうとしてキスしても起きなくて何処までやれば目ェ覚ますかと思ったら服脱がしても気付かないのに一箇所キスマつけると起きて恥ずかしがりながらも流されて抱かれるとこと、あと…」

「翔一ッ!!もう良いから!!それ以上言っちゃダメ!!」

恥ずかし過ぎる。流石の裕泰も顔引き攣ってるし。やり過ぎ…

諏佐先輩も、桜井くんも、他の部員も…皆の視線が私に集中した

今部室に行ったらもう何か色々駄目な気がする…

「自分ら何見とんの?」

「ふぇっ?!」

腕を軽く引かれて、今吉先輩に抱き留められる

「そんな熱烈な視線送っても、秋乃はやらんでー?欲しいならワシから奪い?」

「今吉、お前から宮原を盗るのは無理だから安心しろ」

「えー、じゃあ奪うわ。秋乃、帰って来いよ」

「や、やだっ!!裕泰の彼女になんて、もう、二度と…っ!!」

「ほらな?無理やて、諦めや。なー、秋乃」

「今吉先輩…あの、離し…」

「いやや。そんな離したらそこの…ナントカくんに盗られるわ」

「自信ねぇの?笑えるwwじゃあさ…」

「な、何…っう?!」

「!」

キスされた?裕泰に?キスされたの…?

「…っ!!いや、いやぁあ!!」

今吉先輩が身を引いて、私を裕泰から離してくれる

「秋乃、すまん、大丈夫か?」

「や、やだぁっ!!今吉せんぱ、翔一、しょういち…っ!!ごめんなさ、ごめんなさい、ごめんなさ……っ、いや!!嫌だ、翔一、気持ち悪いの、やだ…!捨てないで…っ!!」

「秋乃、落ち着いてぇや。捨てへんし、嫌わん。ほら」

「しょ、っんぁ…」

また、キス。でも違う。好きな人ってだけで凄く嬉しい

裕泰にキスされた時は気持ち悪かったのに、今吉先輩とはそんな事がない

「うっわー、何こいつ。消毒ーってか?わー、おあつーい。てかさ、もう良いじゃん?お前の彼女はお前以外ともキスする女なんだってば」

「…」

今吉先輩は裕泰が言った事は無視して、私の事だけを見てる

「ん、っ、ふぁ、ぅん、ぁ、あっ、ひぁ…」

「…ん、落ち着いたか?」

「ふぁ…、ぁ、は、い、ありがと、ございます…今吉先輩…」

今吉先輩が笑いながら頷く
裕泰は流石にイラついてきたらしい

でも、今吉先輩も怒ってると思う

目が、笑ってない。いつもポーカーフェイスなのに、目が『怒ってる』と分かる目つきになってる

ここまで感情を露わにした先輩は初めて見る

「諏佐ー、秋乃部室に入れるんやろ、こっち来いや」

「今吉先輩、私歩けます…っ」

「…キスだけで腰抜かしたやろ、阿呆。強がらんで良えから、はよ諏佐と部室行っとき」

とん、と背中を押され、諏佐先輩が軽く支えてくれる

今吉先輩の事を気にしてるのか、必要最低限の接触で済む様に支えてくれているようだ

「はい…すみません諏佐先輩、ありがとうございます」

「あー、気にしなくて良い。てか今吉」

「んー?」

「…部活動停止とかは、喰らうなよ」

「わはは、大丈夫やてw監督も見とるで、そこから。流石に情状酌量的なアレもしてもらえるやろ」

「そうですね。流石に私も数少ない真面目に授業を受けるような良い生徒を失うことは嫌なので。今吉くんが実力行使に出たとしても、何の処分も下しませんよ」

あぁ、怖い。今吉先輩が怒るのって初めて見る…

裕泰もコレは喧嘩になると判断したらしく、ネクタイを外していた

…ってあれ、裕泰が喧嘩強いのは知ってるけど…

「諏佐先輩、あの…今吉先輩って喧嘩は…」

「あぁ、強いから大丈夫だ。あっちもそこそこ強そうだけど、今吉は規格外だから」

規格外ですか、そうですか

…規格外って何それ…

裕泰は何だか既に目が恐怖心で染まっていた

今吉先輩、怪我しないと良いなぁ、とか、何処までも的外れな事を考えながら部室に向かった

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