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召喚された翌日にばったりと廊下で出会ったのは忘れる事のない、いや、忘れられるわけのない人物だった。


「、」


自分と同じ金色の髪に青い衣装の女性。生前は鎧を纏って男性と偽っていたけれど、すぐに分かる。
僕を映す翠の瞳はこれでもかというほど見開かれていた。
その真っ直ぐした光を見るのが怖くて、思わず俯いてしまった。
ずっと会いたいと思っていたのに、いざその場になると怖くて怖くて仕方ない。
いっそ逃げ出してしまいたい程だ。でも、それではダメだと、なにも変わらないと分かっているから。


「お久しぶりです、父上。」

「っ、エドワード……」


絞り出すようもらした声を、その人はちゃんと聞いてくれた。
いたたまれなくなって気の抜けたように笑えば、懐かしい声で自分を呼んでくれた。


「ずっと、お会いしたかったです。そして、謝罪をしたかった。」

「そんな…!いや、謝らなければならないのは私の方で……!」


翠の瞳を潤ませて、父は優しく言い募る。
本当にこの人は優しくて優しくて、自分に厳しい人だ。


「いいえ、いいえ。僕はあなたと、母上の思いを踏みにじった。それは変えようのない事実です。あまつさえ貴方と、国に牙を剥いて……」

「ッそれは!……それは、貴方を蝕む呪いがさせたこと、貴方の罪ではありません。……私が、貴方を喪うことを恐れたばかりになにも伝えず、貴方を傷つけ、結果的に……!」

「ううん、ううん、父上は悪くないよ……」


俯いて謝罪を続けるていると自分の頭に温かいものが乗せられた。
ああ、懐かしい。昔、ほんとうに小さい頃に落ち込んでいると、こうして父上は自分を慰めてくれた。
それから母上がお菓子を焼いてくれて、 3人でそれを囲んで食べたこと。
1つ楽しい記憶を掘り出すと、次々に優しい思い出が蘇る。
ガヴェインがグランガレットに乗せてくれたこと、トリスタンが音楽を奏でてくれたこと、ランスロットはあまり外出のできない自分を気遣って彼の故郷の工芸品をくれたこと、アグラヴェインが勉学の上達を褒めてくれたこと、モードレッドが珍しい動物を捕まえてきてくれたこと、ギャラハットは常に自分を気にかけてくれて時間があれば顔を出してきてくれたこと。
懐かしいあの頃を思い出して涙が止まることなく溢れ出る。本当に本当に幸せだった。
父上は撫でていたその手をそのまま頬に添え、はらはらと落ちる涙を優しく拭ってくれた。
その手がとても懐かしくて、本当にあたたかくて、ついその手に甘えてしまう。


「嗚呼エドワード…エド……私の、私達の愛し子……」


優しい腕に抱かれて、許されたこと、再会できたことが嬉しくて、生まれて初めて泣きながら笑った。
触れ合った頬と頬で、互いの涙が混じり合った。

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