いとこ以上、
なあ、いとこって結婚できるらしいぞ
◇夏祭り

正義の手を握りしめながら神楽を見た。
金魚とスーパーボールが入ったビニールの紐で正義の手首が痛そうだけど、オレが持つって持っててくれる。
やっぱり正義は優しい。

空いた手には水風船と齧りかけのリンゴ飴。
オレは2個取れたけど、正義は取れなくて、だから、正義の持っているのはオレがあげたヤツ。
それが正義の手でぽよんぽよん音を立てるのが嬉しい。

「正義ぃ〜〜!!」

突然女の子の声が正義を呼んだ。

「ああ、シオリ、ミウ」

また、だ。
さっきから正義は何度もこうして話しかけられる。

「一緒にまわろう?」

「あっちにカメ売ってたよ〜。いこ!」

綺麗な浴衣を着た女の子が二人、正義にニコニコ笑いかけた。
親しげで、でも、ちょっと恥ずかしそうにしているのは……二人とも正義の事が好きなのかな?

「行かねえよ。オレ、こいつとまわってるもん」

オレの顔を見た正義に釣られて、二人の視線もオレに向く。
注目されたのが恥ずかしくて、下を向いた。

「えー。誰?」

「いとこ」

「へー、いくつ?」

「同い年」

「ふーん……あ、じゃあ、その子も一緒に来てもいいよ!」


やだ!


……やだな、それ。

折角、正義と二人で楽しかったのに。

一緒に、行くのかな。
正義は行きたいのかな……?

そっと隣を見ると、正義が小さな声でごめんなって言った。


何が、ごめん、なんだろう?


「行かねえよ。オレら今から行く所あるし」

「えー」

「えー、じゃねえよ。じゃあな」


繋いだ正義の手に引かれて、体がかくんとなった。
それに気付いたのか、少しゆっくりと人ごみの中を歩く正義の背中を追いかける。

「ここ?」

気付けは人のいない所に来ていた。
辺りは暗くて、何もない。

「花火、ここで見よう」

「……うん」

二人っきりだ。
あの子たちは良かったのかなって、心配になったけど、本当はオレほっとしてるから、何も言えなかった。
オレ、嫌な奴だ。



 ◇  ◇


パッと暗い空に咲いた花火で、勇気の目がきらきらと反射している。

さっきまで、少し暗い顔をしていた勇気の顔に笑顔が戻ってほっとした。
オレたちだけの秘密の場所だぞって言ったら、うんって嬉しそうに笑ってくれたし。
良かった。

勇気の意見も聞かずに勝手に断った。
だから、少し不安だったんだ。

もう手を繋ぐ必要なんてなかったけど、勇気が何も言わないのを良い事に、花火を見ながらずっと繋いでいた。
家に帰るまで、ずっと。


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