いとこ以上、
なあ、いとこって結婚できるらしいぞ
◆蚊帳

客間で寝るのも今日で二日目。
いつもは父ちゃんと母ちわゃんと同じ部屋で寝てるけど。
勇気の布団と、オレの布団を、二人で汗をかきながら蚊帳の中に敷く。
蚊帳は父ちゃんが張ってくれた。
高いところはオレじゃ手が届かないから仕方ない。

「ふふ」

ごろんと布団に寝転がると、隣から笑い声が聞こえた。

「ふはっ。何笑ってんの」

「え」

「あはは、ムイシキ?」

きょとんとした勇気に、オレの方が笑ってしまう。

「いや、違う。楽しくて」

「……うん。楽しいな」

「楽しいね」

笑いかけると、勇気もオレをみてにっこりと綺麗に笑った。
楽しくて、嬉しくて。
始まったばっかだっていうのに、これが夏休みの間だけだと思うと、寂しくなってくる。

「蚊帳って、基地みたい」

「基地?」

「秘密基地。向こう側がいつもと違って見える。……不思議」

ぼんやりと天井を見つめる勇気の横顔を見つめる。

「……ばあちゃんちは涼しいね」

「勇気んちは?」

「熱い。エアコンないと寝られない」

「エアコン……いいなあ。ウチ、居間にしかねえよ」

「涼しいから、いらないじゃない」

横顔がふわりと笑う。
そりゃそうだ、と思いながらも、馬鹿なことを言えば勇気が笑ってくれるんだと、オレの小さな脳みそにインプットされた。

「二人だけみたいだね」

「ん?」

「蚊帳のせいかな?」

「二人?」

「そう、オレと正義と。二人っきり。音が、しない……」

ゆっくりと目を閉じた勇気の口が、ゆっくりと動く。
その後、すーすーと息をする音が聞こえた。

あれ。
寝ちゃった?

オレが話しかけないとあまり話をしない勇気が、よく話すなって思ってたら。
きっと眠くて仕方なかったんだろう。
なんか、可愛い。


……二人だけの空間。

耳を澄ませば、虫も蛙も鳴いているし、居間の方からはかあちゃんの笑い声も聞こえる。
でもこの空間には、オレと勇気しかいないんだ。


どきどきしてきた。


ドキドキして寝られねえ。
とか思ったけど、沢で思いっきり遊んだ俺は、いつの間にか意識を失ってしまって。

もうちょっと勇気の寝顔を見たかったのに。
勿体ねえ。


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