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Odyssey



高等妖魔×敏感人
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自分の体臭は気付き難いと言う。

俺は臭い、らしい。
それはもう、思い切り顔を顰められるほど。
それは幼い頃からで、家族ですら、いや、家族だからこそ、近くに寄るなと怒鳴られて育ってきた。

自分じゃ全く分からない。


どんな臭いなんだ、と何度か聞いたことがある。
が、具体的な例を挙げてくれる人はいなかった。
まあ、単に、俺と話ができる距離にいる事が辛かったのかも知れないが。


「ふうん」

「あの、ちょっと、……ひゃ……やめ……」

だから、物覚えがついてから人に触れたことがない。
だから。

「ン! や、……や…………」

するりと頬を撫でられただけで、俺は腰を抜かしてしまった。

カクカクと膝が笑う。
肌が粟立って、質の悪い着物が触れるざらりとした感覚が気持ち悪い。

「な……? だれ……?」

正面に立つ人を見上げる。
じっとしていても汗ばむような陽気の中、その人は分厚い外套を羽織って涼しい顔をしていた。
目が……赤い……?

「ま、もの……?」

口から出た言葉は、自分の声だとは思えないほどかさついていた。

目を細めた男が、俺の腕をつかんで立ち上がらせる。
体に力が入らない俺はなすがまま、その男の腕に凭れるように倒れこんでしまう。

「そう呼ぶものもいる。──お前ね、迷惑なんだよ」

低く蕩ける様に甘い声にびくりと体が揺れた。

迷惑。
俺を詰る言葉すら、甘い。

「っ! ンあぁ……」

首筋に男の顔が近づいて、美しい髪の毛が肌に触れた。
くすぐったさに首をすくめながらも、自分の臭いが酷く恥ずかしくて、頭が真っ白になる。

「うちにおいで。お前のようなものがここにいたら迷惑だ」

「え……あの……」

「弱いもの達が惑ってしまって堪らない」

「ぁう……」

ふふっと項をくすぐって、男が笑う。
産毛が揺れる刺激が伝わって、体までゆらゆらと揺らめいた。

「ひどい匂いだ」

「!!!」

べろりと生温かくて湿ったものが耳の裏を舐めて、俺の意識はそこで途切れた。


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人間には悪臭でも、魔物には極上の香りらしいです。
でも、刺激が強すぎて、低級魔物は引き寄せられるまま近づいて、死んでしまう。


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