「
Odyssey」
靄
特異体質×魔王
夜(朝)這い
--------------------
魔王の森には靄が立ち込め、踏み入った者は永遠に彷徨い歩く事になる。
魔物の餌食となるか、飢え疲れ果てる。
何れにせよ、その命が尽きるまで。
「──……どうして……」
「さあ? お前が俺に会いたいって思ってんだろ?」
「っちが……ぁ……あ、やあ……」
時は朝。
所は魔王城の最上階。
寝入りっ端の魔王の上に馬乗りになる俺。
湯上りの水気を含む髪の毛に顔を埋めて薄い耳たぶを食むと、俺の下の体が暴れた。
かーいーこえ。
俺の下半身にダイレクトにヒット。
そんな目で睨んだって、しょうがねえじゃん?
「今日、結界張り直したのに……君は……」
「だから、前のだって綻びなんてないんだって。愛のパワー? なんじゃん?」
「疑問形なのかよ……」
「あ、拗ねた?」
ちゅっと真っ赤な唇にキスすれば、綺麗なお顔がピンクに染まる。
かーいーなあ。
「もう、来ないでくれよ。人間なんて嫌いなんだよ。もう、やだぁ……」
うるうると瞳を潤ませる魔王様の頭を撫でる。
優しい優しい魔王。
人に裏切られてばかりの魔王。
いつからか、自分の城に引きこもって人前に出なくなってしまった魔王。
だけど、寂しがり屋の魔王。
「人間は嫌いで良いからさ、俺は好きでいろよ」
「やだ、きらい……」
「大丈夫、好きだから」
「……きらい……」
子供の様にふるふると首を横に振る魔王に、何度も何度も繰り返す。
「っン……や、ああ……ヤ。は、ン……」
「好き。好き。好き。大好き」
「ッや、……き、ラ……ぃぃ……」
そっと手を添えれば、然程の抵抗もなく開かれる体に己の欲を突き立てる。
決して認めようとはしないけれど、潤んだ瞳と、感じやすい体は正直だ。
俺の事、好きで好きで、堪らないんだろ?
「うん、俺も好きだから」
「アっ! ンあ、ああぁ、あ、アアン」
ギュッと俺にしがみ付くのが、とってもかーいー。
そんなに不安がらなくても、俺はお前にぞっこんラブだ。
いくら魔力に耐性があったって、魔王のお前が本気になったら無事でいられるはずがない。
なんて、そんな論理的に考えなくったって、俺は愛されている。
その位分からない訳ないだろ?
ほら、もう、その蕩けた顔。
かーいすぎて誰にも見せたくない。
ほんと、引きこもりの魔王様、万歳。
--------------------
靄に閉じ込められた人が死んでしまって、また更に心を閉ざす。
なんて、暗い設定ですが、本人は溺愛されてでろでろになってればいいと思います。