「
Odyssey」
睫
騎士×竜
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なんじゃそりゃ。
この国の王は、悪い人じゃないんだけど、王妃がヤバイ。
またしても、とんでもな発言をしたらしい。
「ドラゴンの睫が欲しい」
ああ、そういえば、百年くらい昔に、若返りの妙薬とか言われていた事がある。
それ?
僕のラフな口調に、イケメン君がびっくりしている。
うふ。
可愛い。
あ、イケメン君は国王の使者です。
立派な甲冑を身に着けて、腰には魔力を帯びた太刀を挿している。
僕のどストライクな外見からして、王が指名したんだろう。
賢しいなあ。
「存じません。ただ、こちらに伺うようにと」
「うっわー。上司としてどうよ、それ」
可愛そうなイケメン君は、僕の言葉にむっと顔を曇らせた。
忠実なる騎士殿は、主人の悪口がお気に召さなかったらしい。
「ふーん……まあ、睫くらいイイけど……」
人間と同じで生え変わるものだし、なくて困るものでもないし、別にね?
効果の程は知らないけど、病は気からとか言うじゃん?
あ、老化は病気じゃないか。
ともかく、まあ、イイんだけどさ。
ぶっちゃけ、僕、王妃のこと嫌いなんだよね。
嫌いなやつの喜ぶこととかって、したくないじゃん?
ちらりとイケメン君を見る。
王は、僕が王妃を嫌いなことを知っていて、彼を寄越した。
つまりはそういうことなわけだよね?
ほんと、上司としてどうよ?
労災もんでしょ?
災害自体が申し出るのもなんなんですが。
「使者さん、お名前は?」
「私、は、クロウ、クロウ=シュヴェール、と申しますが?」
「クロウさん、僕はウォック。250年位前からこの地に住まうドラゴンです」
「……は?」
クロウの不躾な視線が僕の全身に注がれる。
今僕は、人間で言えば16、7歳の華奢な少年の姿をしている。
真っ赤な髪の毛と白い肌くらいしか特徴のない、そばかすだらけの男の子。
「睫、抜いていいよ?」
クロウの目前まで近寄ると、上を向いて静かに目を閉じた。
マントを両手できゅっと掴んで、閉じた瞼を微かに振るわせる。
クロウの体が微かに揺れ、息を呑む音が聞こえた。
それに心の中でほくそ笑む。
さて。
この男前はどんな反応を見せてくれるだろうか。
ほんの短い間くらい、楽しませてよね?
だって僕、退屈していたんだ。
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ドラゴンの住まう地に人が王国を作りました。
なので、歴代の王は何事かあればウォックに挨拶します。
ウォックは人間の賑やかな生活が気に入って、町に紛れて暮らしています。
色気駄々漏らしにして、男を惑わしては遊んでるんでしょうね!
メンクイでガタイのいい男が好きです。
酒場で粗野な荒くれなんかを引っ掛けるのが最近のお気に入り。
せっかくなんで、まじめで堅物なクロウにはまったらいいと思います!
むしろクロウがはまったらいいと思います!