死神の帰る場所
本編
捧げたモノ03

寝室に入ると同時にシャツを脱いだ治仁くんの上半身が眩しくてくらくらする。
動作がいちいち格好いいのとか、やめて貰っていいですか?
いろいろ、いっぱいいっぱいなんです。

ええと、変に恥ずかしがるほうが、恥ずかしい状況、かな?

治仁くんに倣って、私もシャツを脱ごうとボタンを外す。
モタモタしていると、ぎしりとベッドのスプリングが微かに鳴った。
そっと顔を上げると、ベッドに腰掛けて半跏に頬杖をついた気だるそうな治仁くんと目が合う。

……ええと、見ないで……欲しいんだけど……。

色気に当てられて固まってしまった私に、治仁くんの手が持ち上げられた。
半端に着衣を乱したまま、よろめく足取りでその手に引き寄せられる。
これはなんて魔法だい?
ちっとも逆らえないよ。


治仁くんの前まで来ると腕をつかまれて、引き寄せられた。
とさりとベッドに押し倒されて、小憎らしい悪戯を受けなが、少しずつ裸にされていく。

「ね……、は、る仁く、ンっ……」

「……うん?」

「っ! ア! ……ん…………、あの、少し、話をね、……っ、した、いん、だけど……」

「いいよ」

良くないよ!
そんな、ペニスを握られた状態で話なんてできないよ!
あ、握ってるだけじゃないね、巧みの技で扱かれてますから。
腰がかっくかくに揺れちゃうんです。
頭おかしくなっちゃいます。
無理ですって。

「手ぇ、離して……、ね?」

「……」

「治仁くん……」

「……何の話?」

何のって……私たち、の?
あ、私“たち”なんてひとくくりにしたら駄目だろうか。

何か言わなくてはと口を開いては、言いあぐねてそのまま閉じる。

困った。
困ったし、情けなくて、悲しくなってくる。
人に言われるままにのこのこやってきて。
悩むふりをして、その実何も考えていなかったんだ。
人に期待するばかりで、自分でどうにかしようとなんて考えていなかった。
情けない。

じっと見下ろしてくる治仁くんの真っ黒な瞳を直視できなくて目を伏せる。
ふっと空気が動いて、瞼に柔らかな唇が落とされた。

「……困らせた」

違う。
違うよ。

君が悪いんじゃないんだ。
私が。


恐る恐る見上げれば、愛しい人が微かに笑みを浮かべてくれる。
ただそれだけで、涙が出るほどうれしい。
これ以上の幸せなんて、きっとないのに、私は何を悩んでいるんだろう。


「──好き。君が。好きなんだ」


こんなにも。
胸が痛い。


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -