死神の帰る場所
本編
捧げたモノ02

口の中の攻防に気をとられていると、器用で大きな手が裾から差し込まれて素肌を弄られた。
ひんやりとした固いい指が、悪戯に皮膚を撫で回す。

何ていうか、とても、そう、イヤラシイんだ。
私のスケベ心を巧みに煽って来る。

腰にジワジワとクる快感に、体が小刻みに震えてしまう。

「っふ、あ……ン……、ん……」

まんまとその気にさせられてしまって、息が上がてきた。
苦しくて、でも、それもまた気持ちいい。

キスの合間に酸素を求めて開いた口の端から唾液が毀れる。

……本当にイヤラシイね。
堪らない。

年上の沽券が泣いているよ。
股間すらイイようにされてしまっているのに。
あ、親父ギャグはお嫌い?


這い上がってきた手が脇に差し込まれて、親指が乳首を押しつぶす。

「っ! う、あ……」

先週、散々快感を教え込まれたそこは、期待したようにつんと尖ってしまっていた。
上下に動く親指に弄ばれて、反射的に体は逃げるけれど、治仁くんの手はしっかりと私の体を捉えていて、なんの抵抗にもならない。

「ヤ、んン…………ぁ、や、あ、っも……」

抵抗?
別に抵抗したいわけじゃない。
嫌だなんて少しも思っていないし。

けど、恥ずかしいんだよ。
だって、乳首だよ?
こんな明るい廊下で、乳首触られて、喘いで、チンコ硬くさせて、ほら、恥ずかしいだろ?

ゆるゆると首を振ってやんわりと腕を押すと、額に宥めるようなキスが落された。
ふわりと軽い、キス。
大切なものだと言っているかのような、優しいキス。
きゅんとしてしまう。

「ア! ア! っも、お……!」

絆された隙を突いて、腰を抱いていた手に股間の塊を握りこまれて裏返った声が上がる。
暴れた体を壁に押し付けられて身動きが取れないままに、ジーンズのジッパーが下ろされる音が聞こえた。

「ちょ……治仁くん!?」

「……うん?」

見上げれば、また一つ、額にキスが落された。
少し細められた真っ黒な瞳が、私を見つめている。

も、もう、絆されないんだからね!?
私は話をしに来たんだから!

……ね!?


…………。


「あの……」

「うん?」

「……ベッド、……行こ……?」


……絆された訳じゃ!
ない!

んだから! ね!?


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