死神の帰る場所
本編
捧げたモノ04

ゆっくりと瞬きをした治仁くんが、緩慢な動きで私の肩に額を当てた。
深くて長い溜息が素肌の上を撫でていく。

溜息……かあ……。
ぐさりと、心に突き刺さる。

「……ごめんよ」

そんなに嫌だったかな?
この間から私の気持ちなんてバレバレだと思ってたんだけど。

そうでもなかった?
やっぱり迷惑だった?

「何が?」

「えっと……気持ち悪い? よね?」

あれ?
また溜息だ。
何で?

「……わかった。話、ね」

「ん? うん?」

ちゅっと唇に軽いリップ音をさせて、治仁くんの体が離れていく。

暖かい体に密着していた素肌に空気が触れるのが、ちょっと寂しい。
自分から言いだしたのに、身勝手だ。

「……ぎゃっ!?」

にゅるり、した感触が尻の割れ目を撫でて、変な声が出た。

微かに冷たい液体をまとうのは、治仁くんの長い指だ。
いつの間に取り出したのか、ジェルの容器が視界の隅に転がっている。
びっくりだ。

尻の形を辿って行き来する指がアナルの上で微かに動きを変える。

えっと?
えっと?

「な、な……? っァ、や……、え? ……ン……」

私の劣情を煽る目的だと分かっていながら、それに逆らうことができない。
ほんの微かなくすぐったさしか感じない愛撫に期待した体が熱を孕んで行く。

「ふ……ン、ぁ……ぁ……」

もどかしい。
もっと、何か、こう、強い刺激が欲しいよ。
その指に押し付けるように尻が動いてしまう。

なんて浅はかなんだろう……。
恥ずかしくてシーツに顔をこすり付ける。


でも、君は話を、話をするって、言ったよね?

何で?

こんな?


藤本さん、と呼ばれて治仁くんの顔を横目で見上げた。

「あなたはね、言葉の怖さをもっと自覚したほうがいいよ」

「こ……とば……、っふあ……」

「そう。言葉。接客業でしょ? 適当なこと言ったら、大変なことになるよね?」

「……ん……ん…………っ、アふっ! ア! ナあ!」

「ふ。ちゃんと聞いててね? 俺が話するから、気持ちよくなりながら聞いてて」

押し当てられた指の先端が少しずつアナルの中に埋まっていく。
そちらに集中してしまいそうになる意識の中、うん、うん、と夢中で何度も頷く。


治仁くんがいっぱい喋ってる……。
凄い。
凄い。

我ながら頭が悪いと自覚しつつも、そんな事に感動していた。


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -