死神の帰る場所
本編
祝杯の肴は03

眉根を寄せて微かに首をかしげると、思い切り頭を叩かれた。

「い! たあああい!!」

暴力反対だ!
涙目になりながら鬼畜なオカマを睨みつけると、逆に般若の様な顔で睨みかされてしまった。
怖いよ〜。

「うるさいわね。とぼけてんじゃないの。星野の治仁ぼっちゃんに決まってんでしょ」

「え……ええええええ???」

うるさいと弦太郎が耳を押さえている。
いや、いや。
だって、びっくりしちゃって。

「…………治仁くんって副社長だったんだ……」

「いい加減にしないと怒るわよ」

既に怒っている弦太郎の低い声にビクリと体が硬直した。

ひい。
怖い。

ごめん。
分かってるけど。
あ、一応、副社長に驚いたのも本当なんだけどね?

「…………だって」

ダーリンって。

「そんな、ダーリンなんて……呼ぶような関係じゃないし……」

「はあ? することして何言ってんのよ!」

「!!!!!????」

する事??
って……え? え? え?
なんで、え?
何で知ってんの!?

「あら、真っ赤。分かるわよ、その位」

「ううう……!!?」

恥ずかしすぎる……。
何それ……。
男に抱かれると分かっちゃうの?
恥ずかしくて外歩けないよ?

「あのぼっちゃんが我慢できる訳ないじゃない」

「…………でも、……そんな……好きとか分からないし……」

「は?」

「や、私はさ、好き、だって自覚してる、けど! ……治仁くんが、私、の事……好き、とか、聞いてないし、そんな、私なんかの事なんて……」

うん。
何も言われていない。
私、彼の連絡先だって知らないし。
先週の帰り際、また暫く来なくて良いと言われて、それから全く音沙汰ないし。

……多分、違うんだよ。
そう言う、ダーリンとかいうのとは。

たまたま。
彼にとっては、きっと、たまたま傍にいたのが私で。

ちょっとその気になった……位なんじゃないかな?
ええと、その位には自惚れても良いかな?
このオジサンの体のどこにその気になったのか、ちっとも分からないけど。

大人だしね?
女の子でもないし、さ。


「ああっもう!」

急に巨体が立ち上がった。

「ばっかじゃないの!? いくらあの男だって、何とも思ってない堅気のノンケに手を出す程馬鹿じゃないし、飢えてもいないでしょうよ!」

店内に響き渡る大声で吼えた弦太郎におろおろしてしまう。
お、女の子たちがびっくりしてるからね、座ろうよ。


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -