死神の帰る場所
本編
死神の帰る場所08

「嫌、じゃ、ないからね?」

首を傾げる治仁くんに伝えようと、口にした言葉は若干裏返ってしまった。
慌て過ぎだね。

「あのね、……えっと、ヌ、かなくて、いいよ?」

うわあ、なんか、言葉の選択も間違えている気がする。
それでも、他に言い方を思いつかないから仕方ない。

黙ったままの治仁くんが、ひとつ瞬きをした。
そうだよね。
意味が分からないよね。

「えっと、ね、その。私ね、寝不足なんだ……」

この、一ヶ月。
治仁くんに会えなかった期間。
君に負けないくらいに寝不足だったんだよ。

治仁くんがさっき言っていたことは分かる。
このまま、その、解すとか……ね、多分辛いんだろうけど。

「……多分、イったら、眠くなってしまうかと……」

思うんだ。

どうなの、この言葉。
情けない。


でもね、治仁くんの寝室は居心地が良すぎるし、何より、こうして治仁くんと一緒にいられる。
これでヌいたりなんかしたら、のび太もびっくりなスピードで寝入ってしまう気がするんだよね。


「だから、ヌかなくて、……ね?」


分かってくれ。
推し量ってくれ。

その言うことを聞かない愚息は置いておいてさ。
その、先をさ、進めてくれたまえよ?
ね?


ゆらゆらと視線を彷徨わせていた私に、治仁くんが静かな声で答えた。


「構わない」

「え…………? っ!! ア、ァア! ひ、や、あ、ぁ、」


ペニスを握ったままの手が、しゅっと動きを再開した。
そのまま、かなり意図的に手が上下する。
思わず飛び出した大きな声が部屋に響く。

なんで?
え?
やめてって、言ったのに?

意味も分からず治仁くんの顔を見上げると、くっと口角が大きく上がった。

……うわあ。



笑顔だ。
悪い笑顔。



「寝ていればいい。解しておく」




「!!!!?」

「とろとろになるまで、たっぷり」

「っひ…。」

「スる時は起こした方が良い?」

「っ!!!! …………!!」


ひ、人でなし発言だああああ!!!


それなのに、その死神の笑顔に魅入られてしまった私には、嫌だなんて思えるはずもなく。
必死に眠気と戦うことになるんだろうな、と悟ってしまった。


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