「
死神の帰る場所」
本編
激おこプンプン兎03
思わず亀岡の肩を掴んで、その小柄な体を揺する。
「いたいよ〜。ママ〜」
「いたいじゃないわよ! ちょっと、あんた、どういう事よ」
「だから、言葉のままだってば。現在組長は失踪中。事情を知ってる一部幹部のみで鋭意捜索中」
「っ! ……なっ! ……な……! はああああ???」
なんなのよ、それ。
ちょっと、もう、訳わかんないわよ。
ヤクザの癖に!
ヤクザでしょ!?
しっかりしなさいよ!!
ちょっと組長!
ナンパって、ナンパって……!
失踪とか!
いい年して何してんのよ!
色々言いたい事はあるけれど、余りの事に驚いて声にならない。
ただ口をパクパク開閉するという間抜け面を晒していると、亀岡の一段低い声が耳に届いた。
「申し訳ない」
「……?」
突然の謝罪に我に返ると、目の前の亀岡はいつもの微笑ではなく真面目な顔をしていた。
「ママにも、ママの従兄の彼にも、申し訳ないと思ってる。ただね、若頭の所為じゃない。その事だけは分かって欲しいんだ」
「…………」
「徒に彼をからかっている訳じゃないて、分かって欲しいんだよね」
「……そう……」
その真摯な言葉に少しだけ驚いた。
随分と若頭を大事にしている、らしい。
今一若頭の評判は良くないと認識していたけれど、どうやらそうでもないらしい。
「淳也の事、本気なの?」
「それは……多分。……良く分からないけれど、“お願い”する位には本気だよ」
「……?」
亀岡の言う事は良く分からないけれど、若頭も被害者なのだろう。
奔放な組長の。
「…………本気ならいいのよ。…………本気なら……。……良くないけど……」
思わず最後に漏れてしまった本音に、亀岡が小さく噴き出す。
……笑ってんじゃないわよ。
「ちゃんと探してるんでしょうね!!?」
「そりゃ! もう……」
ぶんぶんと頷く亀岡にもうひと罵声浴びせようとした所に、入口の扉が勢いよく叩かれた。
閉店の札を下げてあるし、看板の照明も落としてある。
それにも拘らずガンガンと物凄い勢いで叩かれる音に、眉を寄せる。
……酔っ払い……かしら?
それとも。