死神の帰る場所
本編
眠れない夜03

寝巻代わりのジャージの上からやわやわと触れれば、あっという間に芯を持つ。

そうだよね。
我慢させちゃったからなあ。
息子さんも辛かったらしい。


ここは自宅で、寝床でヘッドボードにティッシュもある。
何を躊躇う事があろうか。

ジャージと下着をずらしてひくひく揺れるペニスを握る。
腰から這い上がる快感を味わいながら、手を上下させた。

「……ん」

こんな年にもなれば、自慰に照れや背徳を感じることもない。
溜まったから出す。

それなのに。

治仁くんの顔が頭に浮かぶ。
途端に顔に血が上った。
鼓動が早まり、頭がぐちゃぐちゃと欲に塗れていく。

「あ……ぁ、ァ……」

彼の手が私の背中を這いまわった感触。
耳を擽った冷たい長い指が、髪を掻き分けて頭を固定する。
深く濃いキスの合間に漏れる吐息が耳を犯して、堪らなく興奮した……。

記憶の治仁くんで頭の芯が痺れる。

ごめん。
ごめんよ。

後ろめたさを覚えながらも、オカズにしてしまう。


……キスしてきたのは、治仁くんなんだから……。
少しくらい、良いよね?


「……っァ、は……」


お互い酔っ払っていた。

お酒の席で、キスしたり、裸になったり。
そういう宴会もあるじゃないか。

それと同じだ。
酔っ払いの恥はかき捨て。
お互い様。

「いやあ、最近溜まっちゃっててね、ごめんね。」
「治仁くんも、酔っ払ってたみたいだねえ。」

それで良いだろう?
そう謝って、それでおあいこって事にしようよ。


なかった事に。

ね?


「ンっ!! っ…………!」


ティッシュに吐き出した白濁を見つめる。
何とも言えない虚しさと後ろめたさに襲われながらも、それらをひとまとめにしてゴミ箱に投げ捨てた。






なかった事、には、流石にならないかもしれないけれど。

どうにかごまかせないかなと、狡い自分が思案する。
そんな狡さが一回りして、いっそ告白してしまえ、なんて思考になったり。
数分後には、その後を考えて蒼白になるのだけど。

少しでも時間があれば、治仁くんの事を考えてしまう。
とても疲れる。

でも、腫れた惚れたでこんなになるんだなと、ちょっぴり楽しむ自分もいたりしてね。


流石に土日の接客業は忙しくて、そんな不埒な事を考えている隙はなかった。
そして、日曜日の終業間際に店長に呼ばれた。


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