死神の帰る場所
本編
失恋未満03

安い焼酎でフワフワする頭をベッドに凭れ掛けさせる。
暗い部屋の中、なんだか可笑しくて、ぐふぐふと独り笑ってしまった。

気味が悪いのは承知の上。
誰もいないんだから、別にかまわないだろう。


数時間前に見た、弦太郎の驚いた顔。


ああ、可笑しい。


そりゃ、驚くよね。
私の好きな人。
言っちゃった。

ごめんね、弦太郎。
お前くらいしかいないんだもん。
こんなこと、話せるの。


散々驚いて、なんだか怒ってた従兄弟も、最後には諦めたように笑ってくれた。

それを見て、凄くほっとした。
お前が、笑ってくれて。
良かった。
本当に良かった。


帰り際に聞かれた言葉を、ふと思い出す。

「あんた、その気になるの? その人に、本当に……セックスできるの? そういう意味で、好きなの?」

「うん、好き」

即答した私に、そう、とふわりと微笑んだ弦太郎が、ちょっと泣きそうだった気がする。
私が泣きそうだったのかもしれないけど。


欲情。
してたまらないんだ。

治仁くんの事を考えると、いつも最後に会った時の事を思い出してしまう。

あの時の、堪らない衝動を思い出して、体が高ぶる。
どうしようもなく興奮してしまって、あれから何度自分で慰めただろう。


今も、じわじわとその熱が体を蝕んで、そろりと下半身に手を伸ばした。

仕事着のスラックスを脱ぐ。

皺になるなあ、と思いながらも立ち上がるのが億劫で。
少し離れた床にふわりと投げ捨てた。

左手を持ち上げて、母指球の辺りを口に押し当てる。
右手は下着の中から、すっかり育ったペニスを取り出して扱いた。
ぞくぞくと快感が背筋を這い上がっていく。

くぐもった声が零れてしまう。

このアパートの壁は薄い。
隣に聞こえないようにする為。

それと。

舌を蠢かせて、自分の手を愛撫する。
あの時のキスと同じように、夢中で舌を動かす。
治仁くんの舌とは違って、応えてはくれないし、甘くもないけど。

興奮する。

ちょっと変態じみていると思うけど、それがまた劣情を誘う。

「っ……、ふ……ンん……」

治仁くんの体温。
治仁くんの匂い。
治仁くんの息遣い。

──藤本さん

私を呼ぶ声、その眼差し。

「っ、ァァ……──」



彼に、会いたい。


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