死神の帰る場所
本編
失恋未満01

Barムーンライト伝説に顔を出すと、弦太郎に怒られた。
あれ、そんなに来てなかったっけ、と思わず呟けば、アイラインでばっちり囲まれた目が剣呑に光る。

こ、殺さないで。
すみません、すみません。

そんなにお酒を飲む方じゃないから。
治仁くんのご相伴をいただいて満足しちゃって、暫くご無沙汰だったんだよね。


テーブルに用意されたキープボトルに書かれた日付は3ヶ月近く前。
そりゃ睨まれる訳だ。
珍しく無言の従兄弟をちらりと見ると、水割りのグラスを渡された。
ぐいっと空にして渡せば、やっと、にこりと微笑むオカマ。

いや、別に微笑んで欲しい訳じゃないけど。

殺気がね。
ひしひしと、こう伝わってきてね。
怖いんだよね。

とりあえず、ご機嫌が直ったようで良かった。


「こないだのイイ人とはうまくいったの?」

「あれ、やっぱそれ聞いちゃう?」

細いタバコに火をつけながら流し目を送ってくる従兄弟に、へらへら笑う。
だって、笑うしかない。

治仁くんには、あれっきり一度も会えてないんだから。


「…………まあ、他にもいい人いるわよ」

雰囲気で何かを悟ったらしいベテランママが、適当な慰めの言葉を紫煙に載せて吐いた。
従兄弟とはいえ適当すぎだぞ。
一応客だからね。

「ふられてないからね? 言っとくけど」

「アラ、そう?」

「そう。まだ。ふられてないよ」

だって告白すらしていない。

って、告白って。
あれだよね、好きですって言うやつ。
校舎の裏とかで。

あ、いや、べつに校舎の裏で告白としかしたことないけど。
“告白”って言葉がもつ甘酸っぱさに、遠い青春時代を思い出してしまった。


言うのか?

治仁くんに?

私が?


「好き、です……」

「……」

「っ、あ。イヤイヤ……」


そんな哀れそうな目で見ないで下さい。


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