死神の帰る場所
本編
検証 吊り橋効果03

そういう話、大好物よ、とオカマが微笑む。

「痛みやストレスなんかは、脳内麻薬が働くでしょ? それが恐怖にも働くか、ってことかしら」

「かしら?」

「うふ。混乱してる?」

「だね」

そう。
私はあの日から、混乱しっぱなしなんだから。

「恐怖ってね、自分の生命の危機を察知して感じるんですって」

「ふうん」

防衛本能よね、と微笑むママに頷く。
弦太郎に感じる恐怖は、なるほど、防衛本能だったのか。
なんて言ったらまた怒られるから黙っているけど。

それを察知したわけではないだろうけど、ニヤリとママの口角が上がって、ちょっと体を引いてしまった。

なるほど、防衛反応だ。

「で、男って、命の危険を感じると、ヤりたくなるって言うでしょ?」

「……そう、なの?」

そうなのよ!! と興奮して声を上げる従兄弟の重低音が店に響く。
ひい。
大注目浴びてるよ、弦太郎。

そんな事は全く気にせずに、私に詰め寄ってくるうさぎママ。

目立ってるよなあ……。
恥ずかしい。


「そこで、吊り橋効果!」

「お?」

話が戻った。

「恐怖のドキドキと恋愛のドキドキを間違えンじゃなくて、ヤりたくなったってだけなんじゃないの?」

とアタシは思うのよね! と一気にグラスを開ける従兄弟を感心して見つめる。

「あれって、確か男性でしかテストしてないでしょ?」

「あ、そうなんだ?」

「確か、ね」

流石、よく知っていらっしゃる。

ちびちびとグラスの酒を喉に流し込む。
少し酔いが回って暑くなってきた体に、水割りの冷たさが心地良い。

脳ミソに支配されてる感じがやーよね、とあらゆる支配から卒業してきた従兄弟が口を尖らせる。

可愛くないのになあ。
むしろ気持ち悪いのになあ。
この同い年の従兄弟はどうも憎めない。

「吊り橋効果って一過性らしいから、暫くしたら頭も覚めるんじゃない?」

くしゃりとでかい手が髪の毛をかき回していった。

優しいな、弦太郎。
今お前が女装してなきゃ抱きついてたよ。

この従兄弟は、いつだって私に優しい。

ぐちゃぐちゃ思い悩んでいた事が、そのたった一言で楽になった。


自分の気持ち、なんて、考えてる時点でおかしい。
だな。
考えるな、感じろ、だっけか。


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