死神の帰る場所
本編
検証 吊り橋効果01

隣に座るミニスカートの太ももに置いた瞬間、手の甲を抓られた。
子猫を持ち上げるように、机の上に連行される。

「つれないね、蛍ちゃん」

「ママに怒られるから、やーよ」

「えー」

ちらりとカウンターを伺えば、ママは常連客に抱きついてグラスの酒を無理やり呑ませていた。
ああ、気の毒に。

「んー、今ね、吊り橋を一緒に渡ってくれる子募集中なんだけどね」

蛍ちゃん一緒に行かない? と首を傾げれば、それを真似したように小さな頭がこてんと傾いた。

「え〜? 吊り橋って、淳くん、意味わかんない」

「吊り橋効果って知らない?」

「あ! 知ってる! やだ、淳くん口説いてるの?」

グラスについた水滴をお絞りで拭いながら、蛍がちらりと流し目を送ってくる。
そう、ちょっと口説いてみた、と笑えば、蛍のぽってりとした唇の間からも白い歯が覗いた。

蛍は確か、未処理だったはず。
こんなに可愛いければ、股間に自分と同じモノが付いていても全く気にならない。

とは断言できないか。


ちらりとミニスカートの裾を盗み見て、下世話な想像を頭に描こうとするがうまくいかない。

この店の子たちは、私にとっては妹のようなもので。
性別以前に、そういう対象じゃないんだよなぁ。

「吊り橋に行かなくたって、お酒飲めば同じじゃない?」

「ん? どゆこと?」

蛍が私のグラスにお酒を作って手渡してきた。
一口喉を潤して蛍の顔を見つめる。

「ドキドキを勘違いするんでしょ? お酒飲んだらドキドキして来ない?」

「ああ、なる程」

ねっ? と嬉しそうに笑う蛍に微笑みながら頷く。

確かに、ドキドキしてくるし、お酒の席で恋に落ちることもある。
アルコールは恋愛の促進剤に間違いない。


でも何となく釈然としないんだよなぁ。


「ちょっと、淳也、蛍に手ぇ出してんじゃないわよ?」

「うを」

突然、耳元に吹きかけられた重低音に椅子の上で跳ね上がってしまった。


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