会長^2
会長軟禁された
03

復習テストに、何とか及第点を貰ってほっとしていると、いしー先生が頭を撫でてくれた。
ほんわかした笑顔につられて、思わず私も笑顔になる。

「雫君は優秀だねー」

「いやいや、いしー先生の教え方が上手なんだもの」

少し頼りない雰囲気のいしー先生だけど、実際は有能な教師だ。
教え方も上手いし、モチベーションの上げ方も上手い。
生意気な生徒だって、本人に気取られることなく手のひらで転がすくらいの手腕があると思う。

以前は塾講師をしていたと聞いていたけど、きっと優秀な社員だったろうに。

「なんで首になったんだろ?」

「ありゃー、雫君、それ聞いちゃうのー」

思わずポロリと零れた疑問に、いしー先生が、あはは、と声を上げて笑った。

「あ、ごめんなさい?」

「んーん、別にいいよー」

そーだなあ……とちょっと考えるふりをしたいしー先生の目が、私を見てきゅっと細められた。
にゃんこの様で可愛らしい。

ああ、見た目は立派な大人の男性だけれど、この人の仕草には愛らしさがあるんだ。
発見、発見。

「生徒さん数人に手を出した揚句にね、その保護者さんとも関係を持ったからだよ」

「ひぇえ!?」

驚いた私に、くすくすと笑いながらいしー先生が続ける。

「その内二人には堕胎を要求した非道な教育者なんだ」

「ドラマみたいだねえ」

「そうだねー」

はーと溜息をつく。
いやはや、なんて過去だろう。

人は見かけによらないものだけど、全くそんな風には見えないよ。

「すごいなあ……」

「ねー、まあーったく身に覚えがないんだけどねー」

「ええ? 嘘?」

信じちゃったよ、私。

「うんとね、嘘だけど、ほんとなの」

ん?
どういう事だ?

首をかしげる私の頭を、いしー先生の手のひらが優しく撫でる。

「クビになった理由は、それなんだけど、そんな事した覚えがないんだよねー」

「えー」

濡れ衣かい?
それは……酷い。

「塾も信用第一だからねー。変な噂がたつような僕の態度にも問題があったんだろうって」

仕方ないね、と笑ういしー先生に口を尖らせる。
私は納得できないよ。

「あは、雫君、その顔可愛い」

ぷにぷにと頬を抓られてしまった。

ふむ。
やっぱりいしー先生は見た目通りの人ではないらしい。


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