collar
ピンクと緑
01

受け以外との描写あり
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「ぴろーん」

間の抜けた電子音が部屋に響いた。

#10が目を落としていた書籍から顔を上げると、切りそろえられた艶やかな深緑の髪がサラリと耳を掠める。
反射的にできた眉間のしわを指で揉みながらため息を漏らした。

この施設では珍しい紙媒体の本をテーブルに投げ出して、銀縁の眼鏡を専用のスタンドに置く。

「a MIX will be held.」

モニターに向かうと、素っ気のないフォントが画面上で点滅している。
OKボタンをタップすると表示されたカウントが直ぐに減っていった。

それに目を留めて肩をすくめる。

「何? みんな暇人なの? 30分って横暴だよね」

ぶつぶつと文句を言いながら、#10がシャワールームの扉を押す。

今日の計画は明日以降にずれ込むことだろう。
重たいため息が水音に混じった。



 ◇  ◇



「やっだー、#10がお相手なのね〜」

白で統一された空間を背景にした奇抜なピンクの頭髪が#10の目を攻撃する。
#10の心中に色々な感情がない交ぜになるが、その中で確実に安堵した。

今日の相手は#7。
この一癖のある人柄は苦手だが、ヤバい相手ではない。

「……暇人は君だったか」

「暇人?」

「サインインが早かった」

「ああ! そうなの、ちょうどモニター触ってたもんだから! キタキタ〜って感じ?」

「そう」

思わず口にしたが、特に興味がある話題ではない。
#10はベッドサイドに歩み寄る。
歩きながらイメージを発動させてみるが、うまく発露しない。

「今日は、私がアドみたいね」

一段低くなった声に横目で#7を見る。
片方の二の腕から先をスライム状に変形させてにっこり笑う#7に、心の中でため息を漏らす。

アドとベースでベースの方が圧倒的には体の負担が大きい。
#7が相手で幸いと思うべきだろう、と自らに言い聞かせる。

「それはともかくさ、つっこんでよ〜」

「突っ込むのは君でしょ?」

「じゃなくって! 分かってるくせに、ほんと意地悪よね」

「いじわるって。子供じゃないんだから」

全裸で腰に手を当てて仁王立ちする#7に呆れた視線を送る。
バランスよく肉のついたしなやかな肢体を惜しげもなく晒して、微笑んでいる。

脱いだ服が見当たらないから、この格好で部屋から来たのだろう。部屋からこの空間までカプセル運ばれるとはいえ、#10は呆れる以外にない。

体型に恵まれない#10のコンプレックスを刺激する。

「露出狂」

「あっ! それ、昨日、#3にも言われたわ」

ころころと笑う#7の口から飛び出した名前に思わず鼻が鳴る。
暫く前からその名前は#10の鬼門だ。

「ンふ。さて、おしゃべりはこのくらいにして。はじめましょ?」

#7が意味ありげに笑うと真っ赤な唇が弧を描く。

軽薄で、調子が良くて、五月蠅い。
#10が#7を苦手に思うのはそういう部分だが、人の気持ちに聡い所は嫌いじゃない。


ゆっくりと近づいてきた#7の手が#10の服のボタンに掛けられた。


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