「
明日もFull Moon」
夜明けのプランゾ
道長
20年位前、たまたま狩場に選んだ大学で、兼家さんに出会った。
真面目だけが取り柄の融通の利かない退屈な男。
彼に対する周囲の評価は不当なほど低く、それが印象的でなんとなく手を出してみた。
少なくとも外見と香りは割りと好みだったから。
ハマったのはボク。
ボクの誘惑に揺れ惑う心を必死で律する強靭な理性。
それをねじ伏せる快感。
矮小な人間でありながら何度蕩けさせても正しくあろうとする姿がいじらしくて、柄にもなく興奮した。
彼がどう堕ちるのかを見たくて、最小限の誘惑と、最大限の愛撫でゆっくりと体を開いていった。
今思い出しても、心躍るひと時だった。
「嫌だ」とは言わなかった彼。
「駄目だ」と首を振りながら、体全体でボクを欲しがっていた。
掠れた鳴き声も、涙と涎にまみれた泣き顔も、ふとした瞬間に瞳に戻る理知的な光も、総てがツボで。
夢中になったボクは、彼が衰弱のあまり昏睡して初めて我に返る始末。
甘くてほろ苦い思い出だ。
「ほら、大好きな尻尾でいっぱいかき回してやるよ。あの時みたいに気を失うまで、今度はどのくらい持つか計ろうか」
「あ……駄目だ、そんな……」
真っ赤な顔の彼は、それでも嫌とは言わない。
彼の老いを止めることはできないけれど、期待に潤む瞳はあの頃と少しも変わっていない。
何度も何度もボクに愛されて、体と心の感度は間違いなく上がってるけどね。
「ン……んっふ……」
ほら、耳を軽く食んだだけでこんなに可愛らしい声を出す。
「いつもボクの尻尾を嬉しそうにきゅうきゅう締め付けるのに、駄目なの? わがままな兼家さん。あ、そうか、ペニスを触って欲しいんだ?」
低い声を耳に吹き込むようにすると、ブルリと体を震わせた彼をぎゅっと抱き寄せる。
ペニスが緩く立ち上がってきているのを隠そうとしてもそうはいかないんだから。
「……ちが……」
「嘘つき」
「っ」
びくっと彼が体を硬くする。
ああ、そんなに怯えないで。
責めている訳じゃないんだ。
「ここはおねだりしてるよ」
下半身をこすり付けると、ゴリゴリとお互いの性器が触れ合う。
二人を隔てる布が邪魔だ。
「そうじゃなくて……」
ふるふると首を振る彼が話をしたい様子なので、じっと見つめながら言葉を待つ。
「…………」
その視線に耐え切れないのか、顔を更に赤くさせてじたばたしながら涙目になった。
あはは! 可愛いなあ。