童話体験
にんぎょ姫
現C

真っ赤な顔で目を泳がせている雷を、斗真は真面目な顔で見守る。
スケベオヤジのような内心が漏れ出さないようにするのは骨が折れる。


「新作のグラフィックやサウンドは問題なかった?」

「あ、あー……うん、特に気にはならなかった、かな。海とか、キレーだった」

雷は目を合わせようとしない。
居心地悪そうにもぞもぞ動くのに悪戯心が刺激される。

うっそりと暗い笑みが口元に漏れ出てしまい、慌てて引き締めた。

「視覚聴覚はOK。と。……においはどうだったー?」

努めて明るく。
雷の羞恥心にくすぐりをかける。

「にお……ぃ……」

雷の瞳がちらりと上を向いて記憶を辿っている。
そして、何か思い当たったのか、眉が歪んだ。
うつむいた顔が泣きそうなのは見間違いじゃないだろう。

「ちゃんと嗅覚あった?」

「…………あった……」

「OKー。味覚は?」

ぼそりと答える雷に背中がゾクリとする。
ちらりと様子をみながら意地悪な質問を重ねた。
味覚、あったよね。

「あじ……」

ぴくりと雷の体が揺れる。
脳内では口淫の記憶が再生されているはずだ。
耳まで赤くなった雷の呼吸が浅く速まっている。

その時、雷がちらりと一瞬だけ斗真に視線を送った。

ずきゅん。

鷲掴みにされたように、斗真の心臓が高鳴る。
ぴかちゃん、可愛すぎるよ……。

「あった」

少し開き直ったのか、横を向いてしまった雷がぶっきらぼうに回答した。
が、顔が真っ赤なのは隠しようがない。

「ふむふむー」

メモを走らせながらニコニコと雷を見つめる。

「他に気になったこととかありますかー」

特にSっ気が強いとは自覚してなかったが、雷の反応が堪らない。

「ってゆーかさ、あんで王子がお前なんだよ。てか、俺が姫とか……男で姫とか、おかしくないか? おかしいだろ?」

おっと、根本的なご指摘。

「テストランだーかーらー、手近なデータで済ませたのよ」

「ん、ふうーん? そう、か?」

うん。
嘘だよ。

そんなの、この反応が見たいからに決まってる。
そわそわして、ボクの顔を直視できないでいるぴかちゃんが見たかったんだもの。

大満足だよ。


味を占めた斗真は止まらない。


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