「
童話体験」
にんぎょ姫
結
おそらく、堅く閉ざした王子の後唇は裂け、出血と激痛を伴うことだろう。
そんなこと、できっこない。
そしてまた、人魚姫にはゆっくりと王子の体を慣らす時間もなかった。
夜明けまでには、そう間もない。
それに、王子がいつ気づくとも限らないのだ。
(お姉様……)
波間から見守ってくれているだろう姉たちの顔を思い浮かべる。
(ごめんなさい……)
涙を浮かべながら人魚姫は、ずっしりとした獲物を手に取り、自らの口元に寄せた。
大きく口を開いて、口内に導く。
ひんやりとした感触に眉根を寄せた。
先程まで愛していた王子のモノとは違う無機物なのだ。
唾液で濡らすため舌を這わせる。
(……!)
思わず王子の下半身に目をやった。
そこで頼りなさげに揺れる王子のペニスの形と瓜二つ。
大きさ、硬さ、血管の膨らみすら同じに思える。
そう気付いた途端、この獲物に愛着のようなものすら抱いていた。
たっぷり唾液を絡ませると、人魚姫の口内の熱が伝わったのか、ほんのりと暖かい。
口から引き抜くと、ちゅぷ、と水音がして唇との間に銀糸が張った。
ふっと熱い溜め息が漏れる。
王子の下半身を見つめながら、人魚姫は自らの後唇に凶器の先端を当てた。
唾液がくちゅりと音を立てる。
まがい物だというのに、浅ましい体が喜びにうち震える。
ゴクリと喉が鳴った。
(王子……愛してます)
獲物の上にゆっくりと腰を落としていく。
(あ……ああ、ぁああぁぁん……)
ず。
ずずず。
内壁を押し分けて、圧倒的な質量が人魚姫を犯していく。
(ああああァぁぁ……!!)
突然膝が崩れた。
一気に奥まで貫かれ、人魚姫の背中がしなやかに反り返る。
(ぁはっ、ヤっ! ……なにこれ……きもち、ィ……ィんっ)
堪らない快感に肌が粟立つ。
何もしていないのに腰がぐずぐずと溶けてドロドロになってしまいそうだ。
(あああぁっ! ……はっ! ぁっ! あっ! ぃやあっ!!)
イヤイヤと頭を横に振って意識を反らそうとした。
しかし、人魚姫の意思などお構いなしの過ぎた快感は、ぺニスに集中する。
(ぅん……いやあっ! こんなの……王子! ……ィっちゃう!)
ぽろぽろと零れ落ちるほど涙が溢れ出していた。
滲んだ視界が、さっと明るくなる。
船室の丸い窓から差し込んだ朝日が二人に降り注いでいた。
(……ふぁっ、お、じぃ……)
その安らかな寝顔が光に包まれている。
(あはぁっ!! っんあああアアアアアァァァァ!)
人魚姫の張り詰めたペニスから、堪えきれずに白濁が吐き出され、はたはたとシーツに散った。
「……っん?」
王子の睫毛が震え、ふわりとまぶたが上がった。
明るい船室に誰かの気配がした気がした。
「……気のせい、か。」
自分以外誰もいない船室を見回して、欠伸を一つする。
王子は再び眠りについた。