「
童話体験」
にんぎょ姫
転
人魚姫は、自らの中心にそっと手をやる。
触れてもいなのに欲望に張り詰め、拍動に合わせて揺れている。
王子のペニスを夢中で舐りながら、自らの高ぶりの向こうにある蕾に指を伸ばす。
ただ触れただけの指先に、蕾がまるでキスするようにぱくぱくと蠢く。
そっと指先を押し込むと、柔らかなひだに包まれる。
闖入者に喜ぶように、ひくひくと波打つ内壁。
(あァ……ここに、)
ちゅぱりと音を立てて王子のペニスに吸い付く。
顔を動かして性交を真似た刺激を与えながら、二本に増やした自らの指をゆるゆると押し進めた。
(ぁんっ、入って、くる……)
内壁を圧迫しながら逆流していく指に、腰が甘く痺れる。
(あっ……あっ……)
小さく抽挿を繰り返すと、柔らかな内壁が指に絡みつくように蠕動する。
目を閉じて、後唇を犯す王子のペニスを頭に描く。
お互いの体を打ち付けるように、最奥まで勢いよく犯される。
遠慮ない突き上げに、何も考えられない。
ただ、嬌声をあげて快楽にのみ没頭するのだ。
(ぅあア゙っ……あっ、んあっ……ひもちっ、いひっ……)
勢いよく抽挿する自らの指が内壁を捲り上げ、奥を突く。
それにあわせて、卑猥な水音が波音に混じる。
手淫に耽っていた人魚姫の真珠のような歯が、口に含んだ王子のペニスに触れた。
張り出した部分に引っかかる。
「んつっ」
王子の口からため息ともつかない声が漏れ聞こえた。
投げ出されていた手が宙をさまよい、ぽすりとシーツを叩いた。
びくり、と人魚姫は体を固くする。
慌てて口を離した王子のペニスが人魚姫の頬を叩いた。
(気づかれた?)
心臓が早鐘を打つようにどきどきと響いて、王子に聞こえてしまうのではないかと不安になる。
そっと顔を上げて闇のなか、王子の様子をうかがう。
王子の顔の辺りからは、規則正しい呼吸の音が聞こえてくるばかり。
(……大丈、夫?)
ほっと息を付いた人魚姫は、この部屋を訪れた本来の目的を思い出してしまった。
急な緊張に、ひゅっと喉が鳴る。
緩慢な動作で懐に隠し持った凶器を取り出した。
闇の中、微かな光源を反射して不気味にそのフォルムが浮かび上がる。
(これを……)
人魚姫の指が、そっと王子の陰嚢の奥を探る。
きゅっと閉ざしたままのアナルに触れた。
指の平で周辺を撫でるように形を確かめる。
つぼまった入り口を、ふにふにとマッサージするように触れてみても反応はない。
(……どうしよう……)
すぐ脇のシーツに沈む獲物にちらりと視線を送る。
(挿す、なんてとても……)
その、張り詰めたぺニスを象った凶器が王子に襲いかかるのを想像して、青ざめた。