童話体験
おやゆび姫
鼠E

ぐわんぐわん。
頭の中が揺れている。


信じられない。

嘘だ。


体の内側が蠢いていた。

先ほど満たされていた部分が欠落した。
もっと欲しいと、きゅうきゅう哭いている。

腰は甘く痺れ、達したはずの中心もゆらゆらと治まりきらずにいた。


「良くできました」

汗ばんだ髪の毛を梳かれて、ぴくりと肩が跳ねた。
羞恥でマウスの顔が見られない。

嫌な汗が滲んでくる。

自分のこんな浅ましい姿をどう思ったのだろう。
マウスに軽蔑される。
その事が怖くて仕方がない。

「モールも喜ぶよ。頑張ろうね」

「っ!」

ああ……。
そうだった……。


雷は自分の心が音を立てて萎んでいくのを感じた。
にっこりと微笑むマウスに、曖昧に笑顔を返す。

“花嫁修行”だったじゃないか。
拒否権はないんだ。

「疲れただろう? ゆっくり休むといい。これからはこの部屋で励むのが君の仕事だよ」

「──うん」

凍りつく心と裏腹に、体の熱は冷めやらない。
小さな姿が扉の向こうに消えるのを、レース越しにただ見つめていた。


 ◇  ◇


天窓から幾分傾いた日差しが差し込んでいる。
逸る心に対して、ひどく緩慢な動作でそれに近付いていった。

雷の体が光に包まれる。

暖かい。

じめじめとした地下の匂いに染まってしまった体が浄化されるような気がした。
眦から涙が一筋頬を伝う。
最近は、涙腺が故障しているようだ。

地下の部屋で窓があるのはこの部屋しがない。
気楽だった冬の間のスワロウとのやり取りを思い出して辛くなる。
なるべくなら近付きたくない。

だけれど、あと少ししかない夏の間、できるだけ太陽の光に触れたかった。


「戻らな、いと」

名残惜しさを断ち切るために出した声が驚くほどかすれている。
連日の行為の証拠のようで後ろめたさを覚えた。


のろのろと出口へと向かう。
早くしないとマウスが戻った来てしまうかも知れない。

「っふ……ァ」

焦る気持ちが、体内に埋め込まれたままの異物を必要以上に締め付ける。

数珠のような器具は、雷が動く度に位置を変えて内膜を犯していた。

そこで快楽を得ることを教え込まれた体は、微かな刺激すらぐずぐずと頭をとろけさせる。
時折触れる過敏な箇所がそれに追い討ちをかけた。


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