幸せ疲れ




「今日はポッキーの日なんだが、郁は知ってたか?」


帰宅すると、夫が定番の赤いパッケージのお菓子を片手に駆け寄って来ました。







***


11月11日。知る人ぞ知るポッキーの日。(プリッツの日でもあるそうだが)
もちろん、郁は知っていた。
学生時代なんかはノリでポッキーゲームをしたこともある。(もちろん、女の子同志で)

懐かしい友人の顔が浮かび、後で電話しようと決めて相変わらず嬉しそうに笑っている(というかニヤけている)夫を見て、郁は深いため息を吐いた。


「…急にどうしたの?」
「ん?」
「篤さんはそういうの気にする人じゃなかったでしょ?」

この夫は、結婚してから郁に甘えるようになった。最初の頃は篤さんの愛が感じられると、嬉しくてたまらなかったがー…近頃は、少々重すぎる愛に郁は疲れていた。他人が聞けば幸せ疲れと笑われるかもしれない。けれど、彼女は真剣に悩んでいた。

何かと理由をつけては甘えようと、甘やかそうとしてくる彼。気がつけばそばにいる。それは確かに幸せなことだが、何をしていてもくっついてくるし、ソファで本を読んでいたらいつのまにか彼の膝の上に移動されてたり、一人でお風呂に入っていたのに、いつのまにか浴槽に彼がいたり、リビングで彼の帰りを待っていたはずなのに、いつのまにかベッドに運ばれていたり、いつのまにかお尻やら胸やら腰を撫でられていたり……と、愛が重いというかもうセクハラストーカー野郎か貴様は!と叫びたくなるほど篤の愛は重い。
恋人時代、自分の方が堂上教官のこと好きだ、なんて考えていた自分を殴りたい。
大丈夫よ、あと数年もしたらそんなこと思う暇もないくらい愛されるから。

ー話が逸れたが、とにかく彼に何かきっかけを与えてはいけないのだ。どんな小さなことでも利用するから。
今まで、ポッキーの日は頑張って知らない振りをしていたのに!どこのどいつよ、いらんこと教えたの!



「Twitterで、今日はポッキープリッツの日だから『ポッキー』と呟いてギネス世界記録を目指しているそうだ。」



Twitterのバカーーーー!!
篤さんも、いつもツイッター見ないのに!!

玄関に立ち尽くす彼女に、篤は優しく微笑んだ。

「ポッキーゲーム…しような?」









***


「絶対、しませんからね!」

場所は変わり、リビングで二人は見つめ(睨み)合っていた。


「…どうして」

篤は仏頂面だった。ー家で見るのは久しぶりかもしれない。
しかし、次の郁の言葉に篤は表情を綻ばせた。


「…恥ずかしいから、嫌です」


耳まで赤くした妻に、結婚して何年目だと思うと同時に愛おしさが込み上げる。

「夫婦なんだから、いいだろ」

「夫婦でも恥ずかしいものは恥ずかしいんです!!」

「唇尖らせても可愛いだけだぞ」



ーー照れるなあたし!照れたら負けだ!!



「郁…」

「しませんからね!それ以上近寄っちゃダメっ!」

「郁…( ´ ・ω・ ` )」

「っーーーー!」





篤さんのこの顔に、あたしは逆らうことができない。

ーだって、こんな捨てられた子犬のような目を向けられて平然としていられるわけがない!


未だにしょぼーんとしている篤さんに、仕方なく「…プリン作ってくれたら」と条件を提示した。



彼は、嬉しそうに「もうすでに作ってある」と笑い、ポッキーの箱を開けた。














◆◆◆




「郁!」
「まだやるの!?」
「嫌か?( ´ ・ω・ ` )」
「っ、これで最後だからね?もうポッキーないし…」
「実はもう一箱ある」
「まじですか」
「まじだ」
「…もう、普通にキスしたい…」
「っ!!」
「ポッキーゲームだと物足りな……篤さん?え、ちょ、どうし…ひっ、や、な、舐めないでよっ何!?さ、誘ってなんかな…!!!!!いやーーーーーーーーっ!!!!!!!」







おいしくいただかれました。






◆◆◆








なんだこの勢いしかない果たしてSSと読んでいいのかわからないものは…_(:3」)_
でも( ´ ・ω・ ` )堂上はギャグに徹してるからまあいいかと思ってしまうあれ←
書いてる時は「堂上www」と楽しいんだけど、後から読み返すと恥ずかしくて死

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