※社会人設定








ばたん、と扉の閉まる音を聞いてソファから立ち上がった。
時計を見ると、もうすぐ2時。
はぁ、とため息を吐きながら読んでいた雑誌をテーブルに置いた。





リビングの扉を開けて、おかえり、そう言おうとしてやっぱりため息を吐く。

「名前、起きて。そんなトコで寝ちゃ風邪引くッスよ」

スーツが皺寄るのも気にせずに、彼女は一歩ほどもない上がり口にでろり、と体を横たえていた。(突っ伏してると言った方が適切かもしれない。溶けてる。)
とんとん、と肩を軽く叩きながらそう言えば、うー、だか、あー、だか分からない呻き声を搾り出しながらもぞもぞと体を動かした。
吐きそうとかそんな感じじゃなさそうッスね。
仕方ない、軽く上体を持ち上げてやって、抱き上げる。

「りょー、た…?」

意識だけはあるみたい。はーい、涼太ッスよー、と軽く答えながらずり落ちそうな体をもう一度抱き直す。
相当酔ってる。向こうからも抱きつくようにすがられて、悪い気はしない。
でもまぁ、

「(呑みすぎ)」

会社の飲み会だって言ってたっけ。オシャレなバーとかじゃなくて、居酒屋かなんかだったんだろう。
スーツ タバコ臭いし、なによりもアルコールの臭いがきつすぎる。なんとなく男物の香水の臭いみたいなのもする。
すんすん、と鼻を効かせるもやっぱりそんな臭いがする。
帰って来ただけ誉めてあげようと思ったけどやめだ。
あれだけ男には近づくなって言ったのに。
すり寄ってくる体を今度こそ持ち上げる。

アルコールとタバコと香水。

このまま寝かせてやってもいいんだけど、気になって仕方なかった。
お風呂は沸いてるし、シャワーだけでも浴びるように言おうかと顔を下ろすと、何故だか腕の中で彼女は笑っていた。

「…なんスか」

ふふふ、と笑って答えない彼女にムッとした顔を向ければとろんとした目と目が合った。

「涼太ぁ、」
「はいはい、なぁに」
「涼太はいい香りがするねぇ」
「名前は酒臭いッスねぇ」
「涼太の香り、好きだよぉ」
「…っそ、どーも」

正面からそんなコト言われ慣れてなくて、熱くなった顔を見られないように体を強く抱く。
首もと、耳の近く。すんすん、と今度は名前が鼻をひくつかせる音がした。
ふふふ、と笑った声がダイレクトで耳に届く。

「大好きだよ」

あー、はいはい。
適当に返事をしながら、体を密着させたコトで空いた片手で頭を撫でた。

タバコだかアルコールだか、香水だか。
なんだか分からないけれど、匂いは移る。
お風呂は入ったけど、もう一回入りたい。
仕方ないからまずは一緒にお風呂かな。
声をかけると、ちゃんとわかってるのか、こくりと首が縦に動いた。

お願いだから、今こっち見ないでね。




声には出さなかったけど。




















これじゃない感

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