風呂からあがってタオルで髪を拭きながら部屋に向かえば、ベッドの上、うつ伏せに名前が倒れていた。
2年参りなんてしたコトがなかったんだ、と帰宅早々弱音を吐いていたからきっと疲れてしまったんだろう。

「名前、起きて」
「ん…、んん〜… 」

イヤイヤと枕に顔を押し付けるから声が曇る。
先に乾かしてやった髪を撫でればピタリと動きが止まった。
気持ちいの?と問いかけて気づく。

「(寝てるし)」

すぅ、と寝息だけが聞こえる。なにそれ。
せっかくオレが甘やかしたい気分なのに。
リフジンに怒ってみたり。






本当にあっという間に元旦が終わった。
大晦日の夜から行った二年参りは、とんでもない人の量にびびりつつ。
帽子と眼鏡で変装したオレだと見つけられないからと、手を繋いできたのは結構きた。
そのままバスケ部のメンバーとの集まりに顔を出せばいつの間にか3on3が始まって、くたくたな体でご飯を作る元気もなくて外で夕飯を済ませて帰宅。
疲れたんだろうなぁ、とぼんやり思う。
あと数分で日付が変わる。



そういえば、1日から2日にかけて見る夢が初夢なんだっけ。
テレビで見たよ!とはしゃいでいたのを思い出した。
一フジ二タカ三ナスビ?
縁起のいい夢らしいけれど、百歩譲ってタカ止まり。ナスビの夢ってどんなんだ。
できるなら、幸せな夢を見たい。
枕の下に見たい夢の写真を入れると、夢に出るらしいけど。(それも名前がテレビで見たとかなんとか、)
ふ、と視線を落とす。
…枕の下じゃなくてもいいかな。
髪を撫でていた手を下ろして、その代わりに立ち上がる。
えい、と眠る名前の上にダイブすれば、ぐぇ、なんてカエルが潰れたみたいな声がした。

「お、も…」
「モデルがそんな重い訳ないじゃないッスか」
「涼太くんは、自分の身長と体重を自覚すべきだよ」

なんとかオレの下から抜け出したいのか、ばたばたと暴れるけど、ムダ。
逃がさないッスよー、なんてさらに上から抱き締めてやるとさらにばたばたと抵抗される。さすがに傷つく…。
ごろん、と名前の上から退いて横になった波野と向き合えば、不機嫌そうに眉間にシワ。

「涼太くんは私を圧死させる気なの?」
「まさか」

そんな物騒なコト思ってる訳ないじゃないッスか。
じゃあ、と続きそうになった言葉を遮って続けた。

「名前の夢、見たいなぁと思って」
「へ、」
「さすがに枕の下には引けないし、いっそのコト下ならいいかなって」

へらっ、と笑えば、不機嫌顔は呆れ顔に変わっていた。
微妙な居心地の悪さに、冗談だと適当なコトを言おうとした時、伸びてきた手で頬を包まれた。
柄にもなく、ぎょっとして動きを止めれば、少しの間真剣にオレを見つめた後、へらり、と表情を崩す。
何事かと聞く前にふわりと合った唇に、今度こそ動きが止まった。
頬から手を離して胸のあたりに体を寄せてくる彼女の腰あたりに、ゆるゆると腕を回す。
抱き締めるのをこんなに戸惑ったのは初めてだ。
ぴたり、と体を密着させれば、幸せそうな笑い声。

「こっちの方がいい夢見れそうじゃない?」

あー、もう。ドキドキして心臓が痛い。
心臓の音を聞かせるように、腰に回した手に力を込めてもっともっとぴったりくっつく。
だんだんと寝息に変わっていく呼吸を聞きながら、髪にひとつキスをして、ゆっくりと目を閉じた。





いい夢が見れますね、














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